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微生物が作るクモの糸で繊維ができる!~画期的新素材

蜘蛛の巣20160806

スポーツウエアメーカのゴールドインがバイオベンチャー企業のスパイバーとの共同開発により、世界で初めて人工的に作り出したクモ糸繊維を使用した屋外用パーカーの発売を予定しています。

スパイバーは2015年世界で初めて人工クモ糸の量産技術を確立したベンチャー企業です。

なぜクモ糸なのでしょうか?

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クモ糸の特徴

クモの糸は優れた性質を持ち、NASAをはじめとして、世界の専門家が長年研究対象としてきた夢の繊維なのです。

クモの糸の主成分はフィブロインと呼ばれるたんぱく質で、硬い部分と軟らかい部分が並んだ構造をしているため、丈夫さとしなやかさの相反する性質を兼ね備えています。

クモの糸は単位重量当たりの引っ張り強さは鉄の約6倍もあり、耐亀裂性は防弾チョッキの素材となっているケブラー以上です。

また、軽くて衝撃吸収力が強く、伸縮性はナイロンの2倍もあり、耐熱温度は300℃を超えます。

クモの巣の糸は全て同じ糸でできているように見えますが、クモは7種類の糸を目的に応じて巧みに使い分けています。

巣全体を吊り下げるための引き糸、中央部分、獲物となる虫を捕獲するための粘着性のある横糸、獲物を巻き付ける時の捕獲帯という糸などです。

各々の糸は構成するアミノ酸の並び方が異なっているので強度や伸縮性などの物理的性質が異なっています。

このような素晴らしい特性をもったクモの糸を人工的に作り出せば画期的な新素材になります。

バイオベンチャーのスパイバーが2013年に世界で初めてクモの糸を人工的に作り出す量産技術を確立し、この人工的に作られたクモ糸繊維はQMONOS(クモノス)と名付けられました。

スパイバーのこれまでの経緯

スパイバーを設立した関山社長は慶応義塾大学でバイオの研究をしていました。

研究室の飲み会の席で、クモの糸は凄いのになぜ実用化されないのかなという仲間との会話をヒントに、それじゃやってみようということで、2007年に大学発のベンチャーとして起業し、バイオ技術を使ってクモ糸作りに挑戦しました。

2年後の2009年に微生物を使ってクモ糸作りに成功し、ベンチャーキャピタルのジャフコが2億5千万円の出資を決め、これを契機に出資が増えて現在では出資総額は140億円になっています。

2013年5月に世界初めて人工クモ糸の量産化技術を確立し、その糸を使ったドレスを披露しました。
また、トヨタ自動車の系列の自動車部品メーカーの小島プレス工業と連携して人工クモ糸の工場を新設しました。

2015年にゴールドウインと資本、業務提携し、2016年4月に人工のクモ糸繊維を使用したパーカーを秋に商品化すると発表しました。

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人工クモ糸の生産の仕組み

クモの糸を生産するには大量のクモを飼って生産すれよいのではないかと思うかもしれませんが、クモは縄張り意識が強く、共食いするため、大量に飼育することはできません。

また、クモは数種類の糸を用途に応じて作るので、均一の性質の糸をクモに作らせることはできないのです。

このような事情からスパイバーでは微生物(バクテリア)を使ったクモ糸生産の研究開発を行いました。

微生物は、地球上で最も単純な構造をもった生物で、分裂、増殖のスピードが速く、エネルギー効率にも優れています。発酵技術を使うことにより、少ないコストで大量の微生物を作り出すことができます。

天然のクモから取った糸の遺伝子解析を行い、コンピュータを使ってその遺伝子配列と同じような配列を人工的に作り出し、さらに微生物がクモ糸のタンパク質を作りやすいように細工をして作り変えています。

このように人工的に作ったクモ糸のDNAを微生物に組み込んで培養、発酵させることにより、クモ糸と同じ成分のフィブロインというタンパク質を作れるようになります。

温度や栄養分を調整して、微生物を大量に培養し、培養液を精製するとフィブロインだけを取り出すことができます。これを溶液に溶かして圧縮して押し出すことにより糸状に成形します。

人工クモ糸の量産技術の開発は幅広い分野の研究開発が要求されます。遺伝子工学に加え発酵培養といった化学的な知?なども必要となります。

関山氏はバイオの専門家ですが、発酵、精製、紡糸や加工技術などには門外漢だったため、
培養、紡糸の専門家にアドバイザーとして加わってもらいました。

そして会社を設立して6年目で人工クモ糸の量産技術を確立したのです。

人工クモ糸の用途

クモ糸は優れた特性を持っていて、人工的に作り出したクモ糸繊維QMONOSは衣類の素材、自動車用部品、医療分野での応用が期待されています。

衣服の素材

人工クモ糸の繊維を使った最初の商品がパーカーです。

軽くて伸縮性があり驚くほど丈夫なため、極寒の地の厳しい環境での使用にも耐えられます。外側の素材に人工クモ糸の繊維が織り込まれています。

自動車用部品

小島プレス工業(トヨタ系自動車部品メーカ)と事業提携し、衝突した時に衝撃を吸収する車体を開発中です。

医療分野

手術用の縫合糸、人工血管、人工靱帯など再生医療での活用が期待されています。

環境に優しい

現在主流となっているポリエステルなどの素材は、石油が原料となっていますが、いずれは枯渇します。また、生産工程で膨大なエネルギーを消費し、温室効果ガスを排出しています。

人工クモ糸は常温常圧での発酵による生産のため、消費エネルギーが少なく、微生物に与える餌は植物由来の材料からつくることができます。また、生分解性のため最終的に水と二酸化炭素に分解されます。

将来の展望

生体のもつ優れた機能や形状を模倣し、工学や医療分野などに応用することを。
バイオミメティクス(生物模倣技術)と呼ばれていて、人工クモ糸もその一例です。

世の中にはクモの糸以外にも優れた特性をもったタンパク質が存在します。

例えば、ノミやバッタの関節の成分であるレシリンは非常に高い弾性力をもっています。
また、シロアリの顎はチタン合金と同じくらいの硬度があります。

このようなタンパク質を同様の手法で人工的に合成し、素材として利用することにより
さまざまなアプリケーションが期待できます。

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