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抗生物質が効かない耐性菌発生のメカニズムとは?耐性菌対策は?

201506071エイズ
現在ガンによる死亡者数は全世界で年間約820万人です。

一方、耐性菌による世界の死亡者数は約70万人です。現在のような抗生物質の誤った使用が続くと30年後には耐性菌による死者がガンを上回り、1000万人に達するといわれています。

これはどういうことなのでしょうか?

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抗生物質

抗生物質は細菌性の感染症を治療する薬であり、細菌に作用して細菌を殺したり、細菌の動きを止めたりするもので、カビや放線菌などの微生物によって作られます。

抗生物質は風邪やインフルエンザなどのウイルス性の感染症には効果がありません。

耐性菌

私たちの体には普段から鼻の中や皮膚などに黄色ブドウ球菌、大腸菌、緑膿菌などの細菌がいますが、これらの細菌も耐性化することがあります。

抗生物質の誤った使用により、抗生物質が効かない耐性菌が増えていて、世界的な大問題になっています。

耐性菌とは、抗生物質が効かない細菌のことです。

細菌は全体として数百種類あり、そのうち現在問題となっている耐性菌は10種類以上あり、全体の数%は耐性菌です。特に肺炎球菌や、黄色ブドウ球菌では約半分が耐性菌です。

耐性菌が増えるメカニズム

耐性菌は自然の条件下でも突然変異的にある程度発生していますが、その数は通常の細菌に比べて微々たるものであるため、放っておくと自然淘汰されます。

しかし、通常の細菌と耐性菌が混ざっている状態で抗生物質が使用されると状況は一変し、耐性菌のみが生き残ってしまい、その後耐性菌は増殖することにより勢力を拡大していきます。

耐性菌が発生しやすい抗生物質の不適切な服用方法

抗生物質を飲み切っていない

抗生物質を必要量以下の中途半端な使い方で服用した場合、細菌が完全に死滅しないので、体内に菌が残ってしまい、やがて抗生物質に慣れ耐性化する可能性が大きくなります。

耐性菌を増やさないためには抗生物質はきちんと飲み切ることが必要です。

同じ抗生物質の長期服用

一つの抗生物質を長期間服用するほど、耐性菌の発生する確率が高まります。
少しでも病原菌が耐性化してしまったら、その後は急速に耐性菌が蔓延していきます。

抗生物質の不必要な服用

風邪などでも抗生物質を処方される場合があるようですが、必要がないのに抗生物質を服用し続けると、体内の直接関係のない細菌を死滅させ、逆に耐性菌が生まれやすい環境を作り出すことになります。

今話題となっている腸内細菌も抗生物質の服用により、腸内環境が乱され、健康に大きな影響を与えることになります。

細菌が抗生物質に対して耐性を持つメカニズム

細菌は生き残るために、抗生物質に対して耐性を持つようになります。
そのメカニズムは以下の3種類があります。

細菌が抗生物質を無効化する

細菌が抗生物質の化学構造を破壊してしまう酵素を作り出すことにより、抗生物質を無効化し、薬として作用しなくさせます。

細菌が自身の化学構造を変化させる

薬と薬が作用する場所は、鍵と鍵穴の関係に例えられます。
抗生物質であるが細菌の特徴的な構造の鍵穴に作用することで、細菌を死滅させることができますが、細菌が構造を変化させることにより、抗生物質が効かなくなります。

細菌がポンプを動かして抗生物質を排出する

細菌がポンプのようなものを動かすことにより、自分自身の存在を脅かす毒物である抗生物質を外部へ排出します。

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なぜ耐性菌は怖いのか?

健常者では耐性菌に感染しても免疫力があるので発病する確率は低いですが、体が弱っていたり、赤ちゃんや高齢者など免疫力のない人が感染すると抗生物質が効かないため、場合によっては死に至る場合があります。

政府としての耐性菌対策の取り組み

政府は2016年4月に抗生物質の使用に関して、今後5年間の薬剤耐性アクションプランを打ち出していて、以下のような目標が設定されています。

1. 抗生物質の使用量を現在の水準の3分の2にする。

2.いろいろな菌に効くからと出される比較的味の良い抗生物質の使用割合を現在の
     水準の半分に減らす。

抗生物質による耐性菌の問題は伊勢志摩サミットでも取り上げられました。

耐性菌対策の新たな試み

奈良県のある耳鼻咽喉科では10年前からグラム染色という検査を導入したことにより抗生物質の使用額を5分の1に減らすことができました。

これは患者から取り出した検体を顕微鏡を使ってグラム染色という検査により、細菌を4種類に分類し、菌の種類が分かると、どの抗生物質が効くかが予測でき、無駄な処方を減らすことができるのです。

この検査は約10分間の時間と約600円の費用が必要なためか、日本ではまだ普及していませんが、抗生物質の使用を減らすための非常に有効な方法です。

問題となっている耐性菌

MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)

従来からMRSAは免疫能力の低下している術後患者や老人に感染しやすく、院内感染で発症する場合が多いのですが、抗生物質に対して強い耐性を示すので、抗生剤が効かないということで問題になっています。

CRE(カルバペネム耐性腸内細菌科細菌)

今、医療界が特に懸念している菌がCREです。
耐性菌への最後の切り札といわれる抗生物質カルバペネムを含め、ほとんどの抗生物質が効かない最強の耐性菌です。

CREは自ら増殖するだけでなく、抗生物質を分解する遺伝子を他の細菌に次々と渡し、CREに変えていく特殊な力を持っています。

このため広がりやすく、欧米では5年ほど前から急増し、日本では、2014年初めてCREの大規模な集団感染が報告されました

福岡で抗生物質が効かない淋病が急増

淋菌に有効とされる抗生物質のひとつにアジスロマイシンがあります。
福岡で2010年から2013年の間に患者から見つかった淋菌677件を対象として、抗菌薬に耐性があるかを調査した結果、アジスロマイシンに耐性だった菌の割合が、2010年には1.8%でしたが、2013年には22.6%と急増していることが分かりました。

史上最強の抗生物質の耐性菌が中国、英国、米国で発見

最強の抗生物質といわれるコリスチンに対して耐性を持つMCR-1という遺伝子を持った細菌が2015年11月中国で発見されました。
初めに中国の養豚場で発見され、その後、生肉(豚)と人間からも発見されました。

コリスチンは50年にわたって使われている抗生物質で、主に動物に使用されています。
人間に処方されるのは、他の抗生物質が効かないと証明された時だけです。
中国は世界一の鶏肉と豚肉の生産国であり、これらの家畜に大量のコリスチンを投与しています。

その後、イギリスや米国でもコリスチン耐性を持つ細菌が発見されました。

この細菌自体は加熱調理で殺菌できるため、健康被害のリスクは非常に低いのですが、細菌のもつMCR-1遺伝子が他の細菌にも取り込まれる可能性があり、そうなると抗生物質の耐性菌が出現し、抗生物質による感染症対策が無力化される恐れがあります。

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