カーリングは4人が1チームとなり、2チームで対戦する競技です。
投球者が約28m離れたハウスと呼ばれる円をめがけて、ストーン(石)を投げ、スウィーパー2人がストーンの前の氷の表面をブラシでこすります。
各チームが交互に8回ずつストーンを氷上に滑らせ、ストーンをハウスの円の中心に、より近づけたチームが得点を得ます。これを10回繰り返し、総得点で勝敗を競います。
ストーンが投げられた後、ブラシで一生懸命に氷の表面をこすっている人たちがいますが、このブラシでこすることにどのような意味があるのか、疑問に思った人は多いのではないでしょうか。
本記事では、ブラシでこすることの意味、効果を記しています。
ブラシの前に、先ず、カーリングリンクやストーンについてみてみましょう。
カーリングリンクの表面はデコボコ
カーリングのリンクは、スケートリンクのように平らに見えますが、よくみると、その表面はデコボコなのです。
カーリングのリンクは先ず、ピカピカの平らな氷に仕上げます。
次にゲームが始まる直前に、アイスメーカーの認定資格を持つ人が、選手が試合終了まで微妙なコントロールができるように、気温、湿度、観客数などを考慮して整備します。
ジョウロの穴の大きさ、ぬるま湯の温度や量、リンクの表面温度などの条件を変えて、ジョウロのような散水器で、ぬるま湯を散水すると、水滴はすぐに凍って、直径0.5~1mm程度の小さな氷粒となります。
この氷粒は小石のように見えることからぺブル(pebble:小石)と呼ばれます。
氷の表面をデコボコにするのは、平らな氷のままではストーンがよく滑らないからです。
氷表面がデコボコの方がストーンがよく滑る理由
ストーンは英国のスコットランド産やウェールズ産の花崗岩でできていて、重さは約20kg、直径約30cmあります。
ストーンの底面は真中がくぼんだ皿状になっており、氷と接触するのは直径約13 cm、幅約5mmの帯状のバンドです。
この帯状のバンドとぺブルが接触しますが、ぺブルには平らな氷の10倍以上の大きな圧力がかかります。
1平方センチ当たりでは約50kgという大きな荷重がかかっていることになります。
氷に大きな圧力がかかると、より多くの摩擦熱が発生し、瞬間的に薄い水膜が発生し、これが潤滑剤として働くため、より滑りやすくなります。
ある実験によると、ストーンをある一定の力で滑らせた時の滑る距離は、ぺブルがある場合はぺブルがない場合の2倍以上長くなります。
ストーンにターン(回転)をかける理由
投球者がストーンを投げる時は、ターン(回転)を意図的にかけます。
ターンをかけないでストーンを投げると、ストーンはどちらに曲がるか分からないので、コントロールできなくなるためです。
投球の時、ストーンのハンドルを回しながら手放すことにより、ターンをかけますが、ストーンを時計回りに回転させると右側に、反時計回りに回転させると左側に曲がります。
投球直後のスピードが速いうちは直進しますが、速度が遅くなると回転の影響を受けて、曲がり始めます。
ブラシで氷をこする意味
ブラシで氷の表面をこすることをスウィーピングといいます。
スウィーピングには主に二つの意味があります。
一つ目はストーンのスピードをコントロールすることです。
投球者の投げる勢いでストーンの滑る距離の大部分は決まりますが、スイ―ピングすることで、滑る距離を微調整していきます。
氷面温度はスウィーピングにより、瞬間的に1℃程度上昇します。
氷は温度が上がると、表面が溶けて薄い水の膜を作ると、摩擦力が小さくなるのでストーンが滑りやすくなります。
スウィーピングをやめると氷面温度はすぐに温度が下がって、氷は元の状態に戻るので、ストーンの近くをこすらないとスウィーピングの効果がありません。
最初から最後まで全力でスウィーピングすると、滑る距離は3~4mほど伸びるそうです。
スウィーピングの二つ目の意味はストーンの曲がり具合の調整です。
ターンがかかったストーンをスウィ―ピングすると、あまり曲がらずに真っすぐ気味に進むようになります。
スウィーピングにより、ストーンに当てる時の位置を調整したり、ストーンを避けて回り込ませるときの調整にも使用することができます
リンクの条件はずっと同じではありません。氷が粗くなっていたり、溶けたり、条件は刻一刻と変化します。それに対応するために、スウィーピングは必要となります。
最後に
カーリングの知識がないままに、カーリングの試合で、投球者がストーンを投げた後、スウィーパーがブラシで氷面をゴシゴシこするという変わりばえしない姿を見ても、一向に興味は湧かないと思います。
カーリングは非常に奥深いものがあり、理屈を知れば、面白みは何倍にも増すと思います。
カーリングのことをより深く知って、観戦してみてはいかがでしょうか。