メダカは昔、田んぼや用水路などでよく見かけたものですが、最近はあまり見かけることもなくなり、現在は絶滅危惧種に指定されています。
一方では、観賞用にメダカを飼う人が増え、空前のブームになっているようです。
ここでは、メダカが絶滅危惧種に指定されるようになった理由について記載しています。
メダカの種類
メダカは大きく分けて、野生メダカと人工メダカに分類されます。
野生メダカは、世界的には東アジアから東南アジアにかけて分布している20数種が生息しています。
このうち日本で生息している野生メダカは、青森県から京都府北部の日本海側に分布するキタノメダカとそれ以外に分布するミナミメダカです。
さらに、遺伝子レベルの違いにより、キタノメダカは3グループ、ミナミメダカは12グループに分類されます。
キタノメダカとミナミメダカの違いは、オスの背びれの切れ込みがキタノメダカでは浅いのに対してミナミメダカは深く、また、キタノメダカには体の後半部に濃い網目模様があるのに対して、ミナミメダカではないことです。
人工メダカは、主に鑑賞用に人工的に生産されているメダカです。
白メダカ、ヒメダカ、楊貴妃メダカ、黒メダカ、幹之(みゆき)メダカ、青メダカなどの人気のあるメダカは全て人工的に作り出された人工メダカです。
絶滅危惧種に指定されているのは野生メダカ
生活排水や農薬の使用などによって環境が悪化し、宅地造成、水路の整備などにより、流れの緩やかな小川が少なくなり、野生メダカの生息数が減少し、1999年に環境省によりメダカは絶滅危惧種II類に指定されました。
絶滅危惧種に指定されたメダカは野生メダカのキタノメダカとミナミメダカです。
絶滅危惧種は生息している野生生物の中で個体数が減少し、将来絶滅の恐れが極めて高いもので、環境省ではレッドリストを公表していて、これによりどの地域に棲んでいるどのような生物が絶滅危惧種かを知ることができます。
絶滅危惧種にはⅠ類とⅡ類に分かれていて、Ⅰ類は絶滅の危機に瀕している種で、Ⅱ類は絶滅の危険が増大している種で、Ⅰ類へ移行するおそれのある種です。
Ⅰ類の方がより絶滅の危険は高いということです。
テレビ、新聞などでは全てのメダカが絶滅危惧種に指定されたかのような報道がされていますが、実際には特定の地域に生息している野生メダカが絶滅危惧種に指定されています。
キタノメダカとミナミメダカの絶滅危惧種に指定されている地域は以下のリンクで確認できます。
現在日本各地でメダカの保護活動が行われています。
絶滅危惧種の指定は捕獲などの法的規制を伴うものではなく、一般社会へ警鐘を鳴らすものです。
絶滅危惧I類及びII類のうち、人の手が加わって生息、生育状況に支障をきたす種は希少野生動植物種に指定され、捕獲や採取は法律で禁止されています。
現在野生メダカはまだ希少野生動植物種には指定されていないので、捕獲や飼育が制限されているものではありません。
基本的には個人による捕獲、飼育、繁殖が可能な生物となっています。
メダカが減少して絶滅危惧種に指定された理由
メダカの棲める場所が減少した
メダカは流れの速い大きな川などにはあまりおらず、田んぼや田んぼの間を流れる用水路などのような流れの緩やかな場所に生息しています。
昔の田んぼは、冬でも水が満たされたままでしたので、メダカは田んぼを住処とできました。
しかし、現在の田んぼは、稲刈りの後は全ての水が抜かれてしまい、乾燥した田んぼとなってしまい、田んぼを住処とすることができなくなってしまいました。
また、用水路なども区画整理され、コンクリートなどで固められたような作りになり、メダカの棲める場所が減少してしまいました。
環境が悪化した
ゴミのポイ捨てや汚染した排水による水質悪化などでメダカの減少の原因ともいわれています。
また、森林の開発や埋め立てや農薬の流出などもメダカの減少の原因だと言われていました。
以前は水質悪化がメダカの減少の原因の一つでしたが、現在は法律で汚染を厳しく取り締まるようになり、メダカが生息できる水質は改善されてきています。
外来生物が増加した
メダカを丸呑みにするブラックバスや、メダカの卵を食べつくすブルーギル、メダカの生活環境に入り込み、メダカを追いやってしまうカダヤシなど、外来生物がメダカの減少の大きな原因だと言われています。
日本には、メダカを捕食する生き物は沢山いましたが、長い年月をかけて、共存し、それぞれを補う形で生息していました。
しかしブラックバス、ブルーギル、カダヤシなどの外来種は、繁殖力が強く、急激に数を増やし、短い年月で全国に広まったため、メダカを食べ尽くして、メダカの数が急激に減少しているという事態になっています。
最後に
野生メダカは絶滅危惧種に指定されています。
野生メダカは豊富な遺伝的多様性を持っていて、将来起こりうる環境の変化に対して適応、進化するための可能性を秘めています。
飼っているような品種改良された人口メダカを川などに放流すると、野生メダカと交雑することで、野生メダカの遺伝的多様性が失われてしまい、将来絶滅するかもしれません。
何らかの事情で観賞用のメダカを川に放流するようなことはやめましょう。