お酒を飲んでも、すぐに顔に出る人と、出ない人がいますね。
宴会の時などには、顔に出ないと、お酒に強いと思われて人に勧められたりしますが、ほんとうに顔に出ないことがお酒に強いということになるのでしょうか?
体内でのお酒(アルコール)の分解の仕組み
アルコールは体内に入ると次の2段階に分けて分解されます。
アルコール→アセトアルデヒド
アセトアルデヒド→酢酸
アルコールをアセトアルデヒドに分解
口から体内に入ったアルコールは胃と小腸で吸収され、肝臓へ運ばれて処理されます。
肝臓では、アルコールはアルコール脱水素酵素(ADH)の働きでアセトアルデヒドに分解されます。
アルコール脱水素酵素(ADH)の処理能力はADH2という遺伝子により、変わってきます。
アセトアルデヒドはアルコールより、10倍以上毒性が強いと言われており、顔が赤くなったり、吐き気、頭痛などの不快な症状を引き起こし、二日酔いの原因となります。
アセトアルデヒドを酢酸に分解
アセトアルデヒドはアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)の働きで酢酸に分解されます。
その後、酢酸はアセチルCoA合成酵素の働きなどを経て、水と二酸化炭素に分解され、体外に排出されます。
アルコールの強さ
アルコールに強いかどうかは、アルコール分解能力とアセトアルデヒド分解能力で決まります。
アルコール分解能力とアセトアルデヒド分解能力の一連の働きは人により異なっており、これは遺伝子的に決まっており、途中から変わることはありません。
アルコールの分解能力
アルコール脱水素酵素にはADH1、ADH2、ADH3の3種類の遺伝子が関わっていて、このうち、ADH1、ADH3は個人差が少ないですが、ADH2は個人差が大きいのです。
アセトアルデヒドの分解能力
アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)にはALDH1 、ALDH2、ALDH3の3種類あります。
このうちALDH1 、ALDH3は個人差が少ないのですが、ALDH2は個人差が大きく、その差が酒に強いか弱いかを決めるカギを握っています。
アルコールの強さと遺伝子の関係
アルコールに強いか弱いかの体質は、5つに分類することができます。
Aタイプ
ADH2が非活性型、ALDH2が活性型の人です。
アルコールをアセトアルデヒドへ分解する力が弱く、アセトアルデヒドを酢酸へ分解する力が強いタイプです。
アルコールが体内に?く留まるため、酩酊状態が長く続き、お酒好きになりやすく、アルコール依存症のリスクが最も高くなります。
日本人の割合は3%です。
Bタイプ
ADH2、ALDH2共に活性型の人です。
アルコールをアセトアルデヒドへ分解する力が強く、アセトアルデヒドを酢酸へ分解する力も強いので、お酒に強く、2日酔いになりにくい、いわゆる酒豪と言われるタイプです。
日本人の割合は50%です。
Cタイプ
ADH2、ALDH2共に非活性型の人です。
アルコールをアセトアルデヒドへ分解する力が弱く、アセトアルデヒドを酢酸へ分解する力も弱いので、アルコールも、アセトアルデヒドも体内に長い間留まります。
本当はお酒に弱いのに、顔に出にくいのが特徴で、二日酔いになりやすく、食道や咽頭のガンなどにかかるリスクが最も高いタイプです。
日本人の割合は3%です。
Dタイプ
ADH2が活性型、ALDH2が非活性型の人です。
アルコールをアセトアルデヒドへ分解する力が強く、アセトアルデヒドを酢酸へ分解する力が弱いので、少量のお酒でもすぐ赤くなり、二日酔いになりやすく、一般にお酒に弱いといわれるのはこのタイプです。
飲む経験を重ねると、ある程度は飲めるようになりますが、健康障害が起こりやすいので注意が必要です。
日本人の割合は38%です。
Eタイプ
ALDH2が全く働かない失活型で、お酒が一滴も飲めない下戸タイプの人です。
日本人の割合は6%です。
アルコールに強いか弱いかの検査
お酒に強いか弱いかを検査する方法はいくつかあります。
アルコールパッチテスト
一番安価で簡単にできるのはアルコールパッチテストです。
楽天などでは、3枚入りで数百円で販売されています。
アルコールパッチテストは、脱脂綿に市販の消毒用アルコールを含ませて、上腕部の内側にテープで7分間固定し、剥がした直後と10分後に、脱脂綿が当たっていた肌の色でALDH2の活性を見るものです。
脱脂綿を剥がした後、肌の色が変化しないのが活性型、10分後に赤くなるのは不活性型、直後に赤くなるのは失活型(下戸)になります。
このテストでは遺伝子的にアルコールを受けつけない、下戸タイプの人でもまれに赤くならない人もいるので、遺伝子検査のほうが正確です。
アルコール感受性遺伝子分析キット
アルコール感受性遺伝子分析キットは、口の中を清潔にして、口の中の頬の内側の粘膜を綿棒に付着させ、その採取した綿棒を付属のエアーパッキンに入れて、必要書類を同封して郵送すると、20日ほどで、どの体質かをレポートにして送られてくるサービスです。
医療機関へ出向く必要はありません。
最後に
酒は百薬の長という諺があり、適量なら健康によいといわれています。
しかし、世界保健機関(WHO)の外部組織である国際がん研究機関(IARC)では、発がん性のあるものを5段階に分類しています。
その中で確実に人に対して発ガン性がある、「グループ1」の中にアルコールが入っています。
この「グループ1」には、他にアスベスト、タバコ、ヒ素、毒ガスとして有名なマスタードガスも含まれているのです。また、アルコールが分解してできるアセトアルデヒドはアルコールの10倍の毒性があるといわれています。
いかにアルコールが体に悪いかよくわかると思います。
顔に出ない人でもタイプCのように、実際にはお酒に弱い人がいます。
このタイプはガンになるリスクが一番高く、影響が大きい人で、できるだけ飲酒は控えた方がよい人です。
今後のためにも、自分がどのタイプの体質か、知っておくことも必要なのではないでしょうか。