植物工場のメリット、デメリット、課題は?

出典:http://business.nikkeibp.co.jp

ここ2、3年大手電機メーカーから食品会社まで農業とは全く関係のない異業種から植物工場へ参入する動きが目立ってきています。

現在、植物工場に参入している企業は200社弱です、このうち黒字は約25%で、トントンが33%。残りの42%が赤字と厳しい状況です。

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植物工場とは

植物工場とは光、温湿度、二酸化炭素濃度、気流速度などの植物の生育環境を制御し、通常の土の代わりに培養液によって植物を栽培する生産システムのことです。

光として太陽光を一切利用せず、蛍光灯、LEDなどの人工光源を用いて栽培する人工光型植物工場と、太陽光により生産する太陽光型植物工場に分けられます。

太陽光の利用をベースにして補助的に人工光源を使用する太陽光・人工光併用型植物工場は太陽光型植物工場に含まれます。

太陽光型植物工場は主に海外で行われていて、オランダが一番進んでいるといわれています。

日本が進んでいるのは人工光型植物工場で、日本以外では台湾、韓国でも行われています。

人工光源の変遷

人工光型植物工場の光源は当初、野球場のナイターで使用されているメタルハライドランプを使用していましたが、すぐに熱を持ち、消費電力が大きいという欠点がありました。

1990年代に入ると光が強い蛍光灯の生産が可能となり、植物工場の光源は全面的にメタルハライドランプから蛍光灯に切り換わりました。

1990年代後半になると、LEDが光源として使用できるようになりました。LEDは蛍光灯より消費電力が少ないため電気代が節約でき、また、色の組み合わせや光の強弱の調節がしやすいというメリットがありますが、LED自体の価格が高いというデメリットがありました。

しかし、2010年に政府が打ち出した新成長戦略の一つとしてLEDの100%普及を目指す動きをきっかけにLED価格が下がり、植物工場のLED化が一気に加速しました。

最近、異業種の企業が参入してきているのは光源にLEDを使用した人工光型植物工場であり、ここでは人工光型植物工場について記載します。

人工光型植物工場のメリット

天候や場所に依存せず計画的に生産可能

外界から完全に閉鎖された施設内で農作物が栽培されるので天候に依存せず、どのようなスペースでも設置でき、計画的に安定供給できます。

生産効率が飛躍的に上げることが可能

植物には各々好みの色があり、植物が求める色になるように光源の色を調整することにより、植物の生長速度を通常の数倍に早めることが可能となり、栽培期間を大幅に短縮することができます。

人工光源を使用するので、栽培棚を垂直方向に配置した多段の棚を使用することにより、床面積あたりの生産能力を大幅に増やすことができます。

付加価値の高い農作物の生産が可能

LEDの色(波長)をコントロールすることにより、農産物の味やビタミン、ポリフェノールなどの特定の栄養成分を多くするといったような付加価値の高い作物の生産が可能となります。

衛生的で日持ちがよい

人工光型植物工場での栽培は無農薬栽培であり、収穫時の雑菌が通常の栽培の約100分の1といわれています。

これにより収穫後の日持ちが露地栽培の2倍になり、水道で洗う手間も省略することができます。

品質が一定

常に一定の条件で栽培されるため品質が一定になります。

資源が節約でき、環境に優しい

作物を栽培するのに必要な水の量は、人工光型植物工場では温室やハウスなどの施設で必要な量の約50分の1となります。これは栽培室で放出される水蒸気のほぼ全てを温度コントロールするエアコンの冷却面につく結露水として回収し、再利用できるからです。

また、使用する培養液は循環利用が可能でほとんど外部に排出することはありません。

生産地が限定されないので、設備が整っていれば都市近郊での生産や店舗に隣接しての生産も可能なため、生産地と消費地の距離が短くなり、輸送のためのエネルギー資源や梱包材などを節減することができます。

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人工光型植物工場のデメリット

植物工場で栽培を行うには、初期コストとして、建物の費用、LEDなどの光源ランプや空調などの設備費用が必要です。

また、ランニングコストとしてLEDなどの人工光源用ランプの電気代、空調機器の電気代などの費用が発生します。

植物工場と施設生産(ビニールハウスによる水耕栽培)の10アール当たりのコストを比較すると、設置コストは施設生産の1800万円に対し、植物工場は約17倍の3億1000万円で、ランニングコスト(光熱費)は施設生産の40万円に対し、植物工場は約47倍の1860万円と、圧倒的に植物工場はコスト高になっています。

人工光型植物工場の課題

省エネ技術の促進

人工光型植物工場は、照明と、温湿度などの環境条件をコントロールするための空調設備に多くの電力を使用します。

露地栽培と比較すると、環境負荷は大きくなります。環境負荷とコスト削減のために省エネ技術の促進が必要です。

植物工場の栽培方法が確立されていない

植物工場は光、温度、湿度、養分、二酸化炭素量などをコントロールするハードは揃っていますが、植物の品種によっては、植物の生長と環境条件との関係で解明されていない点が多く、人工光型植物工場のメリットが十分生かされていません。

植物工場に適した品種の開発が進んでいない

採算を度外視すれば、どのような植物でも植物工場での栽培は可能です。

しかし、人工光型植物工場での生産に適した植物は弱い光で、2週間~1ヶ月程度の短い栽培期間で収穫でき、草丈が30cm程度以下の植物です。

強い光が必要な場合や、栽培期間が長くなると電気料金がかさみ、草丈が高い植物では多段棚の段数が少なくなり、栽培密度が少なくなり、生産コストは上がります。

現状では人工光型植物工場に適した品種の開発があまり進んでいません。

まとめ

人工光型植物工場での農作物の生産は露地栽培より生産コストが高くつきます。何か付加価値をつけた農作物を生産しないと経営が成り立ちません。

現在は植物工場の第3次ブームといわれていますが、このままブームで終わらせないようにするためには、植物工場のメリットが生かせるような技術開発が必要なようです。

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