しとしと雨が降り続く梅雨の頃になると美しく咲くのがアジサイ(紫陽花)です。
アジサイは不思議な植物です。
同じ株なのに、花によって色が違っていたり、鉢から庭などに植え換えをすると、花の色が変わってしまうということもあります。
本記事では、アジサイがどのような理由で花の色が変化するのか、また、色を変える方法について記載しています。
アジサイの花の色の種類
アジサイの花の色は、基本色としては、赤、青、紫、白などですが、同じ紫でも赤紫もあれば、青紫もあるなど、多くの種類があります。
大部分のアジサイでは、花の色は土壌の状態に大きく左右され、鉢から庭に植え換えたりすると色が変わることがあります。
花の色が変化する理由
アジサイの花の色はアントシアニンという赤い色素、補助色素、アルミニウムの3つの要素で決まります。
アントシアニンや補助色素は、アジサイの花に含まれている色素で、アルミニウムは土壌中に含まれていて、根から吸収されます。
アントシアニン、補助色素、アルミニウムの3つがそろった時にだけ、アジサイの花は青色になります。
アントシアニンとアルミニウムだけ、または、アントシアニンと補助色素だけでは、花の色は赤色で青色にはなりません。
アントシアニン、補助色素は遺伝的に決まっていますが、根からのアルミニウム元素の吸収量は、土壌の状態によって変わってきます。
同じ株の花でも、根は幾筋にも分かれていて、アルミニウムを吸収しやすい根から養分を吸い上げている花は青色になり、アルミニウムを吸収しにくい根から養分を吸収している花は赤色になります。
また、アルミニウムを中程度に吸い上げている根から養分を吸収している花は青色と赤色の中間の紫色になります。
花の色と土壌のphの関係
どのような土壌にも、アルミニウムの成分は多かれ少なかれ含まれていますが、アジサイの根がアルミニウムを吸収できるのは、アルミニウムが水に溶け出している場合です。
土壌の状態を酸性、中性、アルカリ性と分けると、アルミニウムが最も溶け出しやすいのは、酸性の土壌です。
酸性の土壌ではアルミニウムがイオン化して水に溶け出しているため、根からアルミニウムを吸収しやすくなります。
酸性、アルカリの度合いを表すものとして、phがあります。
phは酸性からアルカリ性の間に0~14の目盛りをつけて、ph=7を中性とし、それより小さければ酸性、それより大きければアルカリ性としています。phの値が小さいほど酸性度が大きくなり、phの値が大きいほどアルカリ度は大きくなります。
ph値が小さい酸性の土壌では、根からアルミニウムは吸収しやすいので、アジサイの花は青色になります。
ph値が大きいアルカリ性の土壌や中性の土壌の場合には、根からアルミニウムを吸収しにくいので、花は赤色になります。
酸性の土壌(ph値小) …青色
アルカリ性の土壌(ph値大)…赤色
花の色を変える方法
花の色は土壌のphで決まると記載しましたが、品種によっては、変わらないものがあります。例えば、白い花です。
白い花
静香、白扇、白富士などの品種は、土壌のphに関係なく常に白い花しか咲きません。
これらの白い花には、遺伝的にアントシアニンの色素が含まれていないからです。
青い花
青い花を咲かせるためには、土壌が酸性になるように調整する必要があります。
そのためには、赤玉土、鹿沼土、ピートモス等を原料にして、pH5.5前後に調整した「青アジサイの土」を使用する方法がおすすめです。
また、肥料としては「青アジサイの肥料」が販売されています。
赤い花
赤い花を咲かせるには、土壌がアルカリ性になるように調整する必要があります。
そのためには、ピートモス、クリプトモス、パーライト等を原料にして、pH6.5前後に調整した「赤アジサイの土」を使用する方法がおすすめです。
また、肥料としては「赤アジサイの肥料」が販売されています。
青色の花が咲かない場合
白色のアジサイは、土壌が酸性でも青色にはなりません。
土壌が酸性で、アルミニウムが根から十分吸収されても、青い花が咲かない場合があります。
補助色素の量が少ない品種や補助色素の働きを妨げる成分が含まれているような品種では、アルミニウムが吸収されても、青色の花は咲きません。
時間の経過による花の色の変化
咲き始めのアジサイの花には、葉緑素が入っているため、一般に薄い黄緑色をしています。
花が大きくなるにしたがって、葉緑素が分解されて緑色は薄くなり、アジサイの色素であるアントシアニンが合成されていき、アントシアニン本来の赤の色調が花に出てきます。
アントシアニンができる頃には補助色素もできているので、アルミニウムが含まれている花では、青色が出てきます。この時、アジサイは最も色が鮮やかな時期を迎えます。
これを過ぎると、また色変わりが始まります。
きれいな青色は紫っぽくなってきます。これは、花の中の酸性の程度が強くなったせいで、青色に赤味が出て紫色がかり、色が褪せたような感じになり、色素自体も少しずつ分解してきます。
この色変わりは、花びらの老化の一種によって起こるものです。
花の盛りを過ぎると褪色して、再び薄い色になっていきます。色調もその頃になるとくすんできます。
以上のようにアジサイの花の色の変化は、土壌が変わることによる変化と、時間の経過による色の変化の2種類によるもので、アジサイのことを七変化とも呼ばれています。