自動販売機などで販売されている缶飲料の缶はアルミ缶とスチール缶の2種類がありますが、これらはどのように違うのでしょうか?
スチールは重くて硬く、アルミは軽くて柔らかいですが、これらはどのように使い分けているのでしょうか?
また、アルミ缶がなぜ増えてきているのでしようか?
アルミ缶とスチール缶の違い
軽い
アルミニウムの比重は鉄の約3分の1と非常に軽くなるため、運搬するのが楽で、輸送コストも低く抑えられるのです。
電気代が安くなる
アルミニウムは鉄の約3倍の熱伝導率をもっています。熱伝導率がよいということは、加熱や冷却がしやすく、短時間で設定温度にコントロールでき、自動販売機などの電気代を低く抑えることができます。
リサイクル性に優れている
リサイクル率は現在アルミ缶、スチール缶とも約90%前後です。
リサイクルした場合は原材料から生産した場合と比較してスチール缶では65%のエネルギーの節約ができますが、アルミ缶では約97%のエネルギーの節約ができます。
アルミ缶の主材料であるアルミニウムはボーキサイトという鉱石から生産されます。この時、大量の電力を必要としますが、リサイクルする時はボーキサイトから生産する場合の3%しかエネルギーを必要とせず、リサイクル性に優れているのです。
アルミ缶とスチール缶の使い分けとは?
元々缶飲料の缶はスチール缶が主流でした。
コーヒー、紅茶、お茶などの飲料では中身を缶に入れた後、食品衛生法によりレトルト殺菌を行うことが規定されています。これは加圧状態で高温で殺菌する方法です。
レトルト殺菌した後は冷却しますが、温度が下がってくると缶内の圧力が外部の大気圧より低くなるので、強度の弱いアルミ缶ではへこんでしまうため使用できないのです。
このため、スチール缶が使用されていました。
但し、炭酸飲料やビールのような炭酸入りの場合は炭酸ガスにより缶の内側から外側へ圧力が加わるので、強度の弱いアルミ缶でも歪むことがないので、アルミ缶が使用されていました。
その後、技術が進歩し、非炭酸飲料でもアルミ缶の内部に窒素を封入して、缶の内部に圧力をかけることにより、レトルト殺菌後も缶を変形させずに、アルミ缶を使用できるようになりました。
ミルク入りの缶飲料は致死率の高いボツリヌス菌が繁殖する可能性があります。
菌が内部で増殖するとガスが発生するので、スチール缶は膨張することにより、ユーザーがこれは変だと察知することができますが、内部に窒素を封入して圧力をかけて膨張させているアルミ缶では、菌が増殖しても察知できないのです。
また、製造工場では、菌が発生しているかどうかの検査は缶の底をたたいて、音の振動で内部の圧力を確認する打検という方法で確認しています。
打検はスチール缶のように底が平らでないと難しく、アルミ缶では底がドーム型にへこませてあるので確認ができないのです。
アルミ缶の底がドーム型にへこませてあるのは、アルミ缶では内部から圧力がかかっていて、底の部分は側面より圧力がかかりやすく、平らのままだと変形してしまうので、内側へ少しへこませることにより、圧力を分散させて変形しにくいようにされているのです。
以上の理由により、最近までミルク入りの缶飲料はスチール缶が使用されてきました。
しかし、アルミ缶に変更することのメリットは大きく、日本コカ・コーラが2014年より、ミルク入りの缶飲料の一部をスチール缶からアルミ缶へ切り替えました。
これは、殺菌技術が進歩したことと、製造工場の衛生管理技術が向上したことによります。
このままいくと、全てアルミ缶に置き換わってしまうのかというとそうでもないようです。
飲料会社にとってスチール缶の材料を生産している鉄鋼メーカーは原料供給元というだけでなく、飲料のユーザーでもあり、今後もスチール缶は少量ながらも使い続けていくようです。
以上、アルミ缶とスチール缶の違いについて記載しました。
アルミ缶には多くのメリットがあり、スチール缶からアルミ缶への切り替えが進んでいて、今後もこの傾向は続くようです。
缶内部で菌が発生した時、ユーザーが異常を察知できるスチール缶から異常を察知できないアルミ缶への切り替えは、いくら技術が進歩したからと言っても、ユーザにとって不安が残りますよね。