クリオネは、その愛らしい見た目と神秘的な泳ぎ方で、流氷の天使と呼ばれています。
この記事では、クリオネは生物学上何類に分類されるのか、その生態や特徴、種類、家で飼うことはできるかなどについて記載しています。
クリオネは何類? 何の仲間?
クリオネは軟体動物の一種で、腹足綱に属します。
動物は、背骨のある脊椎動物と背骨がない無脊椎動物に分類されます。
人間、鳥などの脊椎動物は、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類のような〇〇類という分類の仕方になりますが、背骨がない無脊椎動物の場合には、節足動物、軟体動物のような分類の仕方になります。
クリオネには背骨がなく、無脊椎動物の中の軟体動物に分類されます。
軟体動物は、無脊椎動物の中の体が柔らかい特徴を持つ生物の総称で、腹足綱(カタツムリ、ナメクジ、ウミウシなど)、2枚貝綱(カキ、ハマグリなど)、頭足綱(イカ、タコなど)などに分類されます。
クリオネは軟体動物の中の腹足綱に属していて、カタツムリ、ナメクジ、ウミウシなどと同じ仲間で、巻貝の一種です。
クリオネの正式名称はハダカカメガイで、漢字では裸亀貝と書きます。
クリオネの名前の由来は、ギリシア神話登場するクレイオーという女神に由来していると言われています。
クリオネの生態、特徴
クリオネの体の成分
クリオネの体の大部分は純度の高いタンパク質で、消化腺などが赤く透けて見えます。
また、体内にはプテロエノンという魚類が嫌う化学成分を持っていて、他の魚などの外敵から化学的防御で身を守っています。
クリネオの呼吸
通常、貝類はエラ呼吸しますが、クリオネは巻貝の一種でありながらエラが退化してしまってありません。このため、カラダの表面から皮膚呼吸しているといわれます。
クリオネの運動
クリオネの胴体の前部に透明な1対2枚の翼足があり、翼足を動かして遊泳します。この姿から流氷の天使、あるいは、氷の妖精と呼ばれています。
クリオネの繁殖
クリオネは、ナメクジやカタツムリと同じ雌雄同体で、卵巣が発達した個体と精巣が発達した個体同士で交尾をおこない、数時間ほどで受精が完了し、すぐに卵を海中に放出します。
卵から3~4日で孵化した幼生はヴェリジャー期幼生と呼ばれ、巻貝のような形をしています。
その後、2週間くらいで殻を捨て、体の周りに繊毛を持った多輪形幼生になります。
この時期はまだ翼足が未発達なため、繊毛運動によって移動します。
約半年で成体となります。
クリオネの食べ物
クリオネは幼生期には植物プランクトンを食べますが、成体は主にミジンウキマイマイを捕食して生きています。
しかし、水族館などで人工的に飼う場合には、エサを与えても食べません。
このため、水族館などで展示されているクリオネは何も食べずに生きています。
クリオネは、エサを与えなくても1年くらいは生き続けることが確認されています。
クリオネの捕食行動
クリオネの捕食方法は、妖精や天使のイメージからは想像することができないくらい獰猛で、残酷です。
クリオネは、獲物のミジンウキマイマイを見つけると接近し、触角の間から頭部が割れてバッカルコーンと呼ばれる6本の触手を伸ばし、ミジンウキマイマイを抱え込みます。
そして口円錐の奥にある一対のフックをミジンウキマイマイの軟体部に突き刺し、その養分をゆっくりと吸い取ります。
獲物を捕らえて食べ終えるのに要する時間が平均20~30分です。
クリオネの種類、生息地
クリオネは北極や南極を含む冷たい海域に広く生息しており、日本でも一部の海で見ることができます。
現在のところクリオネの種類は全部で5種類です。
ハダカカメガイ
オホーツク海、北太平洋北海道の海でよく見られるハダカカメガイは体長が2~3cm程度で、身体は頭部と腹部に分かれながら全体的に円筒形の形状をしています。
ネットでの画像や水族館などで展示されているクリオネは、このハダカカメガイです。
日本国内では、主に北海道のオホーツク海側に生息していて、流氷と共に北海道にやってくるため、紋別や網走、知床など流氷観光で有名なスポットでは比較的クリオネが見やすい傾向にあります。
ダイオウハダカカメガイ
ダイオウハダカカメガイは主に北極海や北大西洋で生息している最大のクリオネで、最大で10以上に成長する大型種です。
通常のハダカカメガイが強大化したような見た目をしているので、200年以上ハダカカメガイと混同されていましたが、遺伝子構造が異なることが判明したため、別種として扱われています。
ナンキョクハダカカメガイ
南半球に生息するクリオネとしては、1900年代の初めにナンキョクハダカカメガイの1種類だけが知られています。
クリオネ南極は、南半球内の南極の極水域に生息していて、体長は 1 ~ 3 cm です。
ダルマハダカカメガイ
2017年に北海道網走のオホーツク海沿岸で、約100年ぶりに発見された新種のクリオネがダルマハダカカメガイです。
体長は8mm程度で、クリオネの中では小型の種類に分類されています。
ずんぐりした体形や、全体がオレンジ色で、翼足(翼のように見える、パタパタと動く部分)が小さいことなどが特徴で、そのずんぐりしたダルマのような体形にちなんでダルマハダカカメガイと名付けられました。
富山湾で発見された新種
2017年に富山湾で発見された新種のクリオネにはまだ正式な名称が付いていないようです。
体長は5mm程度なので、クリオネの中ではもっとも小さい種類となります。
その後、 2018年に積丹半島沖で、また、2021年には津軽海峡でも生息が確認されています。
クリオネは家で飼うことはできる?
クリオネは巻貝の一種で天然記念物でもないので、家でも買うことはできます。
クリオネの入手
クリオネはペットショップや観賞魚専門店などで販売されている場合があります。
また、ネットでも販売されている場合があります。一匹1000~3000円くらいです。
北海道では、観賞用などとしてスーパー、鮮魚店で販売されていることもあります。
クリオネの飼い方
飼い方は簡単です。外から見ることができるように、透明な瓶に海水を入れて、入手したクリオネを入れるだけです。
クリオネは寒冷地で生きているので、水温は2℃くらいがよく、冷蔵庫は強にして、水換え用の海水もペットボトルに入れて一緒に冷蔵庫に入れておきましょう。
エアレーションの必要はなく、気が向いたときに水を換えるだけです。海水はネットで天然海水が販売されています。
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自然の環境下では、ミジンウキマイマイを主食としていますが、人口環境下ではエサは与えても食べません。
クリオネはエサを与えなくても1年くらいの絶食には耐えられます。
まとめ
クリオネは生物学上何類に分類されるのか、その生態や特徴、種類、家で飼うことはできるかなどについてご紹介しました。
クリオネの実物を見てみたいという方は、北海道を中心として多くの水族館で展示されているようですので、足を運ばれてはいかがでしょうか。