コウモリが超音波により距離を検知する仕組み|エコーロケーション


コウモリは哺乳類の中で唯一、空を飛ぶことができる動物です。

コウモリは夜行性の動物として知られていて、暗闇や洞窟の中でも自由に飛び回ることができます。

このようなことができるのは、コウモリが超音波を発信し、ターゲットとなる対象物からのエコー(反響)を受信し、位置、速度、大きさなどの情報を得ているからです。
これをエコーロケーションと呼びます。

また、コウモリどうしのコミュニケーションにも超音波が使われています。

ここではコウモリが超音波を使って物体の位置、距離、速度などを検知する仕組みについて記載しています。

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超音波を発信、受信するのはどこ?

コウモリは、種類により超音波を口から発信するものと鼻から発信するものがあります。

口から発信する種類では、空気を咽頭が通る時に出て、声帯を調整して周波数を変えます。

鼻から発信する種類では、鼻の周りに皮膚と軟骨からできた鼻葉という箇所が発達していて、音を細いビーム状にして指向性を高めて発信します。

超音波の受信は耳で行います。耳のつくりは基本的には人間と同じです。

超音波の周波数は?

コウモリが発信する超音波の周波数は大体30kHzから120kHの範囲です。

超音波とは周波数が高くて人間の耳では聞くことができない音波のことです。

一般に20KHZ以上の音波が超音波と呼ばれていて、周波数の上限はありません。

ちなみに、人間が聞こえる周波数は大体20Hzから20KHzの範囲のため、人間にはコウモリの超音波は聞くことができません。

どれくらいの周波数を発信するかは、コウモリの種類により異なります。

超音波の周波数が高いと、波長が短くなるので、小さいものを見分けられ、より詳しい情報を得られます。

しかし、周波数が高いと、空気中を通過する時の減衰が大きくなるので、遠くまで超音波を送ろうとすると、大きなエネルギーが必要になります。

コウモリの超音波

コウモリは超音波を数m秒から数十m秒くらいの短いパルスとして発信しています。

パルスとは短時間に急激に変化をする信号のことです。

一つのパルスには、周波数が一定のCF波(constant frequency wave)と周波数が変化するFM波(frequency modulated wave)の2種類があります。

出典:http://113.43.198.211/~physics/SW/2G09/bat.htmを一部変更

これらの性質の異なった超音波を組み合わせて、ターゲットとなる獲物や周囲の物体の正確な位置、距離、速度、大きさなどの情報を瞬時に得ることができます。

CF波だけを発信するコウモリは稀で、多くのコウモリはCF波とFM波を組み合わせて発信します。
CF波はターゲットの発見、距離や速度を検出するのに適しています。

超音波を発信した方向に物体がなければ、エコーは返ってこないため、物体がないと判断します。

コウモリが超音波により距離を検知する仕組み

距離の検知

物体までの距離は、超音波を発信して、エコーが戻ってくるまでの時間から計算することができます。

音速は空気中では約340mなので、1m先にターゲットとなる虫がいると超音波を発信して、5.9m秒後にエコーが返ってくることになります。

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速度の検知

速度の検知はドップラー効果により、行うことができます。

サイレンを鳴らしている救急車は近づいてくると、サイレンの音が高く聞こえ、遠ざかっている時は低く聞こえます。これがドップラー効果です。

発信した超音波の周波数と反射して返ってきたエコーの周波数の差が分かれば、ターゲットの速度を計算することができます。

野球で投手が投げるボールの球速を測定するスピードガンがありますが、スピードガンの原理も同じドップラー効果を使って球速を測定しています。

これに関しては、記事「スピードガンの仕組みと測定精度」参照してください。

方向、大きさ、形状の検知

コウモリが虫などのターゲットに近づいていく時は、CF波の成分が減少し、FM波の部分が増えていきます。

FM波は、広い帯域の周波数が分布しているので、ターゲットの方向、大きさ、形状など、より詳細な情報を検知できます。

超音波の時間長

ターゲットを捜している時は、数十m秒のパルスを1秒間に約10個程度の間隔で規則的に発信しています。

コウモリがターゲットに近づくと、超音波パルスの時間長を短かくし、発信頻度を多くするように調整し、数m秒のパルスを1秒間に120~200個程度発信するようになります。

距離が短くなると、超音波を発信してから、そのエコーを受信するまでの時間が短くなるので、パルス波の時間長が長いままだと、波形が重なって、正しく検知できなくなるからです。

このような変化はターゲットとの距離が3~4mになった時点で始まり、近付くにしたがって、より正確にターゲットの位置を知ろうとします。

このエコーは、ターゲットとの距離、速度、方向、大きさ、表面の性質によってさまざまに変化します。

聴覚情報の情報処理

コウモリの脳は、耳で受信した聴覚情報から、必要な音の物理現象を解析するための機能を持っています。

たとえば、ターゲットとの距離を計算する場所は、エコーの遅れ時間の特定の値にだけ反応する神経細胞の集まりでできているため、反応する細胞によって直ちに距離がわかる仕組みになっています。

まとめ

コウモリは暗闇や洞窟の中を自分が発信する超音波のエコーを受信して、仲間との識別、物体との衝突を避けることができます。

コウモリはCF波やFM波、ドプラー効果などを巧みに駆使し、人間の視覚と同じような機能を持っています。

以上、コウモリが超音波により距離を検知する仕組みについてご紹介しました。

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