トウモロコシは稲、小麦とともに世界の三大穀物の一つとして知られ、最も生産量の多い農作物ですが、その起源や原産地は謎に包まれています。
ここでは、トウモロコシの起源、原産地やどのようにして日本へ伝わってきたのかをご紹介します。
トウモロコシの起源、原産地
日本人が主食にしている稲には祖先となった野生の稲があり、また、小麦には小麦の元となったとされるタルホコムギやエンマコムギという植物が明らかになっています。
しかし、トウモロコシにはこれといった明確な祖先種が見つからないのです。
植物は子孫を残すために、種子を外部に散布する必要があり、例えばタンポポのように綿毛で種子を飛ばしたりして、さまざまな仕組みが工夫されています。
トウモロコシは、皮を剥ぐと中から黄色いトウモロコシの粒が入っていますが、この粒がトウモロコシの種子です。
トウモロコシは、散布しなければならない種子が皮で包まれたままで、自力で地面に種子を落とすことができません。このため、野生のままでは生育することができず、人間の手を介さなければ生きていけない植物なのです。
このように、トウモロコシは不思議な植物ですが、その起源についてはこれまで3つの説があります。
トウモロコシは神から人類への贈り物
この説は、トウモロコシの起源を神話や伝説に求めるものです。
中南米にかつて栄えたマヤ文明、アステカ文明などの民族の間では、トウモロコシは神から与えられた食べ物であると信じる伝説があります。
たとえば、アステカ文明では、トウモロコシの女神であるセンテオトルが、人間にトウモロコシの種を与えたとされる伝説があります。
これは伝説で、科学的な根拠はありませんが、トウモロコシが人類にとって非常に重要な食糧であることを表しています。
トウモロコシは、中南米の多くの民族にとって、主食であり、宗教的な儀式でも重要な役割を果たしていました。
トウモロコシは宇宙からの贈り物
エジプトのピラミッド、イギリスのストーンヘンジ、イースター島のモアイ像のような大昔の構造物や人工遺物は、造られた当時にあったと推測されるより、はるかに高度な技術力が必要とされるものがあります。
また、古代の絵画の中には、宇宙船、宇宙飛行士、地球には存在しない生物のようなものが描かれているものがあります。
これらは、地球外からの訪問者、または彼らから技術を学んで人類が造ったのではないかという推測されることがあり、トウモロコシは、宇宙人からの贈り物ではないかと指摘する人もいます。
しかし、この説は、科学的な証拠を欠いており、多くの科学者から否定されています。
トウモロコシはテオシントの子孫

出典:Wikipedia
現在、トウモロコシの起源として最も有力な説とされているのは、テオシントがトウモロコシの子孫であるとする説です。
テオシントはメキシコやグアテマラなどの中南米に自生するひょろ長い草のような植物で、一年草のイネ科植物です。
テオシントは草丈がトウモロコシの約半分から4分の3くらいしかなく、また、トウモロコシの茎がひとつしかないのに対して、テオシントでは茎が叢状(そうじょう)に数多く形成されます。
また、テオシントは、細い穂に石のようにかたい種皮で覆われた穀粒が数個だけついているのに対して、トウモロコシは数百の穀粒が整然と並び、穂軸はがっしりしていて、穀粒は硬い種皮で覆われています
さらに、トウモロコシは花粉を作る雄花がひとつだけ茎の先端にできますが、テオシントでは多くの分れた枝の各々に雄花がつきます。
このように、テオシントとトウモロコシでは形態が大きく異なっているため、テオシントがトウモロコシの先祖種であることに異論を唱える研究者が多く、長い間論争が続いていました。
しかし、遺伝子解析技術が進歩し、テオシントとトウモロコシでは、遺伝子的に近く、古代人が収穫の度に、大きい実を多くつける個体を選んで、その種を播くことを長い年月をかけて繰り返し続けてきて、その積み重ねで現在のような大きい実を多くつけるトウモロコシになったと考えられるようになりました。
今日では、テオシントがトウモロコシの先祖種であるということが有力な説になっています。
トウモロコシの原産地
現在、トウモロコシは世界の多くの国で生産されていますが、元々高温多湿な気候が栽培に適していて、原産地はメキシコ、グアテマラ、ボリビアなどの中南米付近といわれています。
トウモロコシが世界に広まったのはいつ?
中南米の先住民の食糧として広く栽培されていたトウモロコシは、1492年イタリア出身の探検家コロンブスの最初の航海によって、トウモロコシの種子がヨーロッパに持ち込まれたとされています。
コロンブスがトウモロコシをヨーロッパへ持ち帰った後、人間の食用としてだけでなく飼料用、工業用としてヨーロッパ諸国、北アフリカ、中近東に急速に広まりました。
アジアへの伝搬は16世紀半ば頃から始まり、ポルトガルやアフリカからチベット経由で中国には伝わり、また、フィリピンやインドネシアにはスペインより伝えられ、それが東南アジアに広まったとされています。
トウモロコシが日本へ伝わったのは安土桃山時代
日本へは1579年(安土桃山時代)にポルトガル人によって、フリントコーン(硬粒種)が長崎に伝わりました。
その当時は南蛮船がトウモロコシを運んで来たことから「ナンバンキビ」と呼ばれ、九州、四国の山間部で栽培され、その後、中国、近畿、東海地方、関東周辺の山地へ伝わったとされています。
本格的にトウモロコシが栽培されるようになったのは、明治時代初期で、北海道の開拓に伴い、北海道農事試験場がスイートコーン(甘味種)の品種をアメリカから導入したことが始まりです。
以上、トウモロコシの起源、原産地についてご紹介しました。