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高速道路などのトンネルの照明の色は、昔からオレンジ色です。
このオレンジ色は、屋内ではあまり使われない色ですが、なぜトンネルではこの色が使われているのでしょうか?
また、近年、オレンジ以外に、白色の照明が増えてきていますが、これはどのような理由によるのでしょうか?
トンネルの照明はなぜオレンジ色なの?
トンネルの照明は1960年代から設置され始めました。
その当時、道路用照明は白色の蛍光水銀ランプが使われていましたが、蛍光水銀ランプと比較して、効率が良くて消費電力が少なかったことと、視認性が良いオレンジ色のナトリウムランプが採用されました。
光源の種類としては、最初は低圧ナトリウムランプ、後に高圧ナトリウムランプが使われました。
人間が目で見える可視光は、波長が 380nmから780nm(nm:10億分の1m)の範囲です。
青色の光の波長は短く、赤やオレンジ色の光の波長は長くなります。
ナトリウムランプがトンネル内の照明に使用されたのは視認性が良いことですが、これは光の散乱現象に関係しています。
当時、自動車の排ガスの規制は、現在ほど厳しくなく、トンネル内では排気ガスにより見通しが悪い状況で、多くの微粒子が浮遊していました。
このような状態で問題になるのが光の散乱現象、特にレイリー散乱というものです。
レイリー散乱は、光の波長の4乗に反比例して散乱が強くなります。
波長の短い青色の光の散乱は大きく、波長の長い赤やオレンジ色の光の散乱は小さくなります。
長波長成分だけでなく、短波長成分を含む白色光で照明すると、浮遊微粒子によって照明光の短波長成分が多く散乱されてしまい、前方の見通しが悪くなってしまいます。
これは、夕日がオレンジ色に見えるのと、同じ理屈です。
夕方には、太陽の高さは低く水平方向から光が射してきます。この場合、太陽光は大気に対して浅い角度で入射するので、太陽光が大気を通過する距離が長くなります。
太陽光は白色光なので、長波長成分から短波長成分のいろいろな波長成分の光を含んでいて、大気を通過する距離が長いと、光のほとんどは、私たちの目に届く前に失われてしまい、あまり散乱せず残った赤色やオレンジ色の光だけが届くため、夕日は赤く見えるのです。
ナトリウムランプは、波長が約589nmのオレンジ色以外の波長成分はほとんど含んでいないため、散乱されにくく、遠くまで見通しが効くのです。
以上がトンネルの照明にナトリウムランプが採用された理由です。
なぜオレンジ色から白色に変わってきているの?
その後、自動車の排ガス規制が厳しくなった結果、以前ほど、自動車から排気ガスが出なくなり、トンネル内でも煙が立ち込めることが少なくなったため、白色の光でも見通せるようになりました。
ナトリウムランプのオレンジ色のデメリットとして、本来の物体の色とは異なる色に見えてしまうことです。
例えば、赤色の消火栓はトンネル内では、黒に近い色に見えてしまうような弊害がありました。
また、効率の良い白色の光源が新しく開発されたことで、見え方の変化が少ない白色光源が好まれるようになりました。
この結果、1999年からはナトリウムランプより、消費電力が少なく、白く光るHf(高周波点灯専用形)蛍光ランプが使用されるようになりました。
また、2009年には、白色のセラミックメタルハライドランプもトンネル用照明として登場するようになりました。
さらに、2011年からは、低圧ナトリウムランプの10倍の寿命がある白色のLEDランプが使用されるようになりました。
最近では、新しく作られたトンネルの9割以上でLEDランプが採用されるようになりました。
また、ナトリウムランプが使われている古いトンネルでも、寿命を迎えたものについて、順次、白色のLEDランプに交換されてきています。
まとめ
トンネルの照明が設置され始めた1960年代からです。
その当時、道路用照明は蛍光水銀ランプが使用されていましたが、蛍光水銀ランプと比較して、効率が良くて消費電力が少なかったことと、排気ガスによる浮遊微粒子が多い環境下でも視認性がよいオレンジ色のナトリウムランプが採用されました。
これがトンネルの照明がオレンジ色である理由です。
1999年以降、白色のHf蛍光ランプ、セラミックメタルハライドランプ、LEDランプなどの白色光源が採用されるようになってきました。
これは、自動車からの排ガスが少なくなり、白色光源でも前を見通せるようになったことや、新規に効率の良い白色光源が開発され、見え方の変化が少ない白色光源が好まれるようになってきたからです。
以上が、トンネル照明がオレンジ色から白色に変わってきた理由です。