猫、バッタなどジャンプ力のある動物、生物はたくさんいますが、その中でもダントツでジャンプ力があるのはノミです。
ノミは体長が1~9mmで、その体長の実に150倍もジャンプができるといわれています。
これは人間なら、30階建てのビルを飛び越えることになります。
ここでは、ノミはなぜジャンプ力があるのか、その秘密について記載しています。
ノミのジャンプ力の秘密
ノミの脚には筋肉のほかに、レジリンというゴムのような性質をもつ弾性たんぱく質が備わっていることがわかっています。
筋肉は低温になると伸縮率や出力は下がりますが、レジリンは温度の影響を受けて機能が落ちることはありません。
レジリンはエネルギー効率が非常に高く、伸縮性があることが知られています。
このレジリンの働きによって、ノミは持続的に大きな力を発揮することができるのです。
レジリンに蓄えられたエネルギーは 1ミリ秒の速さで解放されるため、曲げた脚を勢いよく伸ばして跳躍したりすることができます。
通常のゴムは変形させる際に加わったエネルギーの一部は熱に変わり、元の形に戻るのにはエネルギーの60%が使われます。このためゴムのボールは弾むたびに弱まっていきます。
子供が遊ぶスーパーボールはよく跳ねますが、落下させたとき、元の高さの 80%まで跳ねるのに対し、レジリンでは 実に97%まで跳ねかえり、ほとんどエネルギー損失がありません。
レジリンはノミ以外に昆虫の脚やハネにも備わっています。
現在、これを医学や工業などに応用しようという研究が進められており、今では人工的にレジリンを作ることができるようになりました。
レジリンの課題
レジリンを実用化するためには、いくつかの課題があります。
その一つは硬度の問題です。レジリンは単体では強度的に弱く何らかの補強をしなければなりません。
補助関節、人工椎間板、心臓の弁などへの応用が期待されています。
以上、ノミがなぜジャンプ力について記載しましたが、その秘密はノミの脚のレジリンという物質にあることがわかりました。
このように生物の構造や機能から着想を得て、それらを人工的に再現することによって、工学や材料科学、医学など様々な分野への応用をめざそうとする学問領域をバイオミメティクス(生物模倣工学)といい、私たちの生活をより便利で豊かにする可能性を秘めています。