食品メーカーからフリーズドライ食品の新商品が続々と発売され、市場規模は急速に拡大しています。
フリーズドライの最大手アマノフーズでは200種類以上のフリーズドライ商品を販売しています。
ここでは、フリーズドライの原理や、作り方などについてご紹介します。
フリーズドライの原理とは?
フリーズドライ(真空凍結乾燥技術)は食品を凍結した状態で乾燥させることにより、常温での長期保存を可能にしたもので、水分を抜くのに水の昇華現象を利用しています。
昇華とは、固体が液体の状態を経ないで直接気体になることをいいます。
通常、水は、氷→水→水蒸気へと変化しますが、昇華は氷から水の状態を経ないで一気に水蒸気に変化する現象です。
水の沸点は1気圧では100℃ですが、気圧が下がると沸点は下がり、0.0004気圧では-30℃になります。
食品を-30℃以下に凍結して真空状態にすると、食品内の凍結していた水分が一気に昇華し、水蒸気となって揮発し、食品は乾燥します。
水分が飛んだあとは空洞ができていて、そこに湯または水を注ぐとその空洞に水分が入って、短時間で元の状態に戻ります。
フリーズドライ食品の作り方(みそ汁の場合)
みそ汁を作り1食分ずつ型枠に入れ、約-30℃の凍結庫で8時間以上凍らせます。
乾燥機に入れて、真空状態にして24時間以上かけて水分を抜きます。
出来上がったフリーズドライのブロックには、水分が飛んだところは空洞になっていて、湯を注ぐとその空洞に水分が入り、元に戻るという仕組みです
フリーズドライ食品のメリット
フリーズドライ食品は缶詰やレトルト食品と比較して軽くてコンパクトです。
乾燥させるのに高温の熱を用いていないので、食品の組織や栄養素が変化せず、少量のお湯を加えるだけで風味や栄養価を落とさずに作りたての状態を再現できます。
また、水分を含まないので保存食品の中では最も細菌が繁殖しにくく、常温で長期保存が可能です。賞味期間は約1年(スナック類などは6カ月)です。
フリーズドライのデメリット
フリーズドライ商品は非常に吸湿しやすいので、保管する時は注意が必要です。
フリーズドライ商品を生産するには冷凍設備、真空状態にして乾燥させる設備、低湿包装設備など高額の投資が必要です。
また、熱風で乾燥させる他の乾燥食品を生産する場合と比較して約2倍の消費エネルギーが必要となり、効率が悪いのです。
フリーズドライ食品にはどのようなものがあるの?
フリーズドライ食品は元々昭和30年代に南極観測隊や自衛隊などの厳しい環境下で過ごす人たちの保存食に利用されていました。現在ではこの他に災害時の非常食、登山などのアウトドア用の食料にも利用されています。
食卓に登場した最初のフリーズドライ食品は、インスタントラーメンのスープの具に使用されているネギです。そしてフリーズドライが一躍有名になったのは、たまごスープやカップ麺の具として販売されるようになってからです。
フリーズドライ食品の代表格はみそ汁です。お湯を注ぐだけで本格的なみそ汁ができあがります。
最大手のアマノフーズでは、味噌汁だけで約70種類の商品を販売しています。
みそ汁以外にはスープ、そうめん、おかゆ、雑炊、デザート類(イチゴ、リンゴなど)、カレー、ビーフシチュー、ミートパスタ、リゾット、麻婆ナス、豚しゃぶ鍋、キムチ鍋、カニすきなどがあります
最近ではチキンカツの玉子とじ、1人用の鍋なども発売されています。
また、インスタントコーヒーにもフリーズドライ製法で生産されているものがあります。
宇宙食にも採用
宇宙飛行士がISS(国際宇宙ステーション)やソユーズなどの宇宙船内で食べるために開発された食品を宇宙食といいますが、2007年以降、鮭のおにぎり、わかめスープ、カレーラーメンなど30品目のフリーズドライ食品が宇宙日本食として認証されています。
フリーズドライできない食材とは?
唯一フリーズドライできない食材は餅です。
通常、フリーズドライ処理をすると、水分が飛んだところは空洞になって、水分を与えると元の状態に戻りますが、餅は米をついて糊状になっているので、フリーズドライ処理をしても空洞の部分が糊でふさがれたような状態になるので、水分を与えても水分が浸透しないので、元の状態に戻らないのです。
災害用のフリーズドライ餅は餅米の代わりに餅米粉を使用していて、水分を加えると元の状態に復元できるようになっています。
フリーズドライの食品以外の用途
医療分野では輸血に多く使われる血小板にフリーズドライが使われています。
血小板は温度変動に弱く保存期間が3日程度ですが、フリーズドライを行うことで長期保存が可能となりました。
また、精子や卵子の長期保存にフリーズドライ技術が使用されています。
以上、フリーズドライの原理や、作り方などについてご紹介しました。