マツタケの人工栽培はなぜ難しいの?|生産量を増やす別の方法は?

マツタケは、1kg当たり数万円と非常に高価な食材です。

マツタケが高価な理由は、需要に対して生産量が少ないことです。

生産量を増やすための一つの方法として、人工栽培が考えられますが、人工栽培は難しいのが実情です。

ここでは、マツタケの人工栽培が難しい理由や、マツタケの生産量を増やす別の方法を記載しています。

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マツタケの人工栽培はなぜ難しいの?

マツタケが人工栽培できない理由を記載する前に、キノコについて簡単におさらいしておきましょう。

キノコとは?

マツタケはキノコの一種で、キノコは菌類の仲間です。

種子植物は種子で子孫を残しますが、菌類は胞子で子孫を残します。

胞子から菌糸という細い細胞が伸びて育ち、土の中や、落葉や枯れ木に菌糸が広がっていきます。

キノコの傘と太い柄のような部分は子実体(しじつたい)と呼ばれています。

子実体は胞子をつくる器官で、糸状の菌糸が集まってできたもので、菌類が胞子を散布するために作る器官です。

菌糸体は、子実体の根元から、土の中、あるいは樹木や動物の体内など、動植物中に伸びていく白い糸状のものです。

キノコは、植物のように光合成を行わず、他の生物に依存して生活しています。

その依存の仕方により、腐生菌(ふせいきん)菌根菌(きんこんきん)の2つのタイプに分かれます。

腐生菌のキノコ

腐生菌は、倒木、切り株、落ち葉など、死んだ生物を分解し、それを栄養として生きている菌類です。

腐生菌には、シイタケ、ナメコ、マイタケ、エノキタケ、ヒラタケ、マッシュルームなどがあります。

スーパーなどで見かけるキノコは、ほとんどが腐生菌のキノコで、人工栽培うことができます。

菌根菌のキノコ

菌根菌は生きている樹木と共生関係を築いて生息している菌類です。

菌根菌は、土の中からチッ素、リン酸、カリなどの養分や水を吸収し、樹木に与えます。

その代わりに、樹木は、光合成で作った糖類などを菌類に与え、その命を支えています。

菌根菌には、マツタケの他、ホンシメジ、ポルチーニやトリュフなどのキノコがあります。

菌根菌のキノコは、人工栽培が難しいキノコです。

マツタケは、マツタケ菌という菌根菌が作る子実体で、マツタケ菌は、アカマツと共生関係を築いて生活します。

マツタケ菌がアカマツの根に付くと、アカマツの根は異常に分枝して太くなり、特殊な形を示すようになります。これが菌根です。

マツタケ菌が成長して、マツタケができるためには、まずマツタケ菌がアカマツの根と共生して菌根を作ることが必要です。

マツタケは、菌根を通じてアカマツの木が光合成により生成した糖分を吸収する一方、土壌中に張り巡らした菌糸から、ミネラルなどの養分や水を吸収して、アカマツに与えます。

土壌の中に菌糸がびっしりと増えていくと、シロと呼ばれるコロニー(集団)を作ります。

シロには,マツタケの菌糸や菌根がたくさん形成されています。

シロの菌糸は、周辺のアカマツの根に次々と新しい菌根を作って、毎年10~15cmずつ同心円状に広がっていきますが、障害物があると成長できません。

シロの成長を妨げるものは、大きな根や岩などのほかに他の微生物の場合があります。

マツタケ菌は、競争力のない、非常に弱い菌で、他の菌類や細菌があると、生きていけません。

シロができて、土の中の温度が19℃以下になり、降水量が増える9月頃にマツタケができるといわれています。

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マツタケの人工栽培はなぜ難しいの?

マツタケを人工的に栽培しようとする試みは、昔から、何度も行われていますが、まだ成功していません。

特殊な培養液で、マツタケの菌糸のかたまりを培養して、小さなマツタケができた例はありますが、食べられるほどの大きさにまで成長した例はありません。

マツタケ菌の胞子をアカマツ林にまいて、マツタケを育てようとする試みも行われています。

マツタケの胞子をまけば、発芽して、菌糸が出て、マツタケが生えるはずですが、マツタケ菌は、非常に成長が遅く、他の成長の早い菌や細菌がたくさんいるため、それらの菌との競争に負けてしまい、なかなか思うように菌糸が成長しません。

マツタケ山のマツタケ菌がはびこっているシロに、アカマツの苗木を植え、そこで菌根を作らせた後、その苗木を別のアカマツ林に植える方法も試みられています。

これは、苗木の根からマツタケ菌が周囲にあるアカマツの根に侵入して菌根をつくり、それらが発達してマツタケが発生するという仕組みです。

このようにしてマツタケが発生した例はありますが、それをどのように育て、大量生産に結びつけるのかも、今後の課題です。

マツタケの生産量を増やす他の方法

マツタケは高価な食材の代表格となっています。

国産マツタケの収穫量は、昭和初期には6000トン程度であり、最盛期の1941年には、12000トンもあり、その頃は、マツタケの価格はシイタケより安かったそうです。

その後、マツタケの収穫量は激減し、2016年には70トンまで減少しています。

現在は、マツタケは国産もので、1キログラムあたり数万円の値がつくほどの高級食材になってしまっています。

マツタケが高くなったのは、生産量がピーク時の1/100以下に激減したからです。

それでは、なぜマツタケの生産量は激減したのでしょうか?

昔は燃料を得るために、アカマツなどが茂っている山で落ちている枯れ枝を丹念に集めて持ち帰っていましたが、現在では、田舎にまでプロパンガスが普及し、山へ枯れ枝を集めに行く人は、全くといっていいほど、いなくなってしまいました。

枯れ枝や枯れ葉が落ちたままで放置されると、それらを分解して生活する細菌や菌類が繁殖し、腐植層が厚くなり、栄養状態がよくなります。

マツタケ菌は、土壌の栄養状態が悪い方がよく繁殖するという性質があります。

土壌の栄養状態がよくなると、マツタケ菌の菌糸は成長できなくなり、マツタケも生えません。

マツタケが生えるようにするには、腐植層ができないように、枯れ枝、落ち葉を取り除く、山の手入れをすることが、必要不可欠なのです。

マツタケの生産量を増やすには、先ず、山の手入れを提言する専門家もいます。

まとめ

マツタケは昔シイタケより、値段が安い時期がありましたが、生産量がピーク時の1/100以下に激減し、今日のような高級食材になっています。

生産量を増やすためには、人工栽培での生産が考えられます。

マツタケ菌はアカマツと共生関係を築いて生きていて、そのメカニズムが解明されていないため、人工栽培は難しく、成功していません。

マツタケの生産量が減少したのは、プロパンガスが普及し、燃料を得るために行っていた山の手入れがされていないため、マツタケ菌が嫌う腐植層が厚くなってきているためです。

マツタケの生産量を増やすためには、山の手入れをして、マツタケが生えやすい、やせた土地にすべきだと提言する研究者もいます。

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