毎年夏場になると、海、川、湖などに出かけて子供が溺死するなどの水難事故が起こります。しかし、乾性溺水は海、川、湖がなくても起こることがあります。
溺水とは
溺水とは水などの液体が気道に入って、肺で酸素と二酸化炭素のガス交換ができなくなって、低酸素状態になることです。溺水により死亡した場合を溺死といいます。
乾性溺水のメカニズム
人間の喉の奥は食道と気管に分かれていて、物を食べない時は、鼻や口から呼吸ができるように喉頭蓋が開いた状態になっています。
食物を食べる時はのどを通って食道から胃へ送られるはずの食べものが気管に入ってしまうことがないように、喉頭蓋が閉じられます。この時は呼吸ができない状態です。
乾性溺水とは、口から入った水などの液体が気管の方へいきそうになり、せきこんだり、むせるような状態が続くと液体の刺激により喉頭部分で痙攣が起こり、喉頭蓋が閉じた状態になって肺に空気が送り込まれなくなり、呼吸ができなくなることです。
この状態が長く続くと低酸素状態になって死亡してしまいます。
飲み込む水の量がスプーン1杯程度でも乾性溺水を引き起こすことがあるようです。
海やプールで泳いでいて溺死する場合は、海水や水などが肺に入って、肺胞における二酸化炭素と酸素のガス交換ができなくなって、低酸素状態になって死亡するもので、この場合は湿性溺水と言います。
乾性溺水の症状、対策
乾性溺水は水の肺への侵入を防ぐ人体に備わっているメカニズムによるものなので防ぐことはできません。
しかし、乾性溺水の症状は分かっています。乾性溺水の主な症状として、眠気、過敏性、呼吸困難、痙攣などが挙げられます。
子供が泳ぎ疲れた後などに、急激な眠気、呼吸困難、痙攣などが襲ってきた場合は注意が必要です。
症状が出始めると、無呼吸状態が8~10分ほど継続します。
この間に的確な処置を行えれば90%近くが蘇生すると言われていますが、これを過ぎると悪化していきます。
乾性溺水はすべての水死事件の約1/%という確率で起こりますが、小さな子どもの間ではその確率は上昇します。
非常に危険な事故ですが、ほとんど知られていません。
乾性溺水の症状が見受けられたら、すぐに蘇生法を試み、救急車を呼びましょう。