冬眠する動物と冬眠しない動物の違いとは?

冬は気温が下がり、食べ物が少なくなり、動物にとって生きるのが大変厳しい季節です。

冬を乗り切るのに多くの動物が冬眠しますが、真冬でも冬眠せずに活動している動物がいます。

ここでは、冬眠する動物と冬眠しない動物の違いについて記載します。

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冬眠する動物と冬眠しない動物の違い

動物には周囲の温度に関係なく、体温が一定に保つことができる恒温動物と、体温調節ができないため周囲の温度が変化すると、それに合わせて体温が変化する変温動物とがいます。

冬眠をする動物としない動物の違いは、自分の体を温める能力を持っているかどうかです。

変温動物は、寒い冬には周囲の温度に合わせて体温が変化するので、冷えて動けなくなってしまいます。このため、冬眠して冬を越します。

恒温動物は、基本的に寒い冬でも体温が下がらないので活動することができます。このため多くの動物は冬眠しませんが、一部の恒温動物の中には体温を下げて冬眠するものがいます。

冬眠する動物の例

分類 冬眠する動物
恒温動物(哺乳類) ネズミ目 シマリス、ヤマネ、ハムスターなど
コウモリ目 キクガシラコウモリなど
ネコ目 ツキノワグマ、ヒグマ、ホッキョクグマなど
変温動物 爬虫類 ヘビ、カメ、トカゲなど
両生類 カエル、イモリ、サンショウウオなど
魚類 コイ、フナ、メダカ、キンギョ、ドジョウなど
昆虫 クワガタムシ、カブトムシ、テントウムシなど
甲殻類 カニ、エビ、ザリガニ、ヤドカリなど
貝類 エスカルゴ、カタツムリ、タニシなど

恒温動物の冬眠

周囲の温度に関係なく、体温を一定に保つことができる恒温動物は哺乳類と鳥類です。

鳥類には冬眠するものはほとんどいませんが、哺乳類の一部には冬眠するものがいます。

冬眠する哺乳類は、クマを除いてある共通点があります。それは、リス、ネズミの仲間のように体が小型であることです。

恒温動物でも、冬は体から熱が逃げやすくなるため、体温を一定に保つには、体内でより多くの熱を発生させなければなりません。そのためにはより多くのエネルギーが必要です。

体が小さい動物ほど、体重に対する体の表面積の割合が大きくなり、体から熱が逃げやすくなります。

気温が低くなる冬には食べ物が少なくなるので、小型の動物にとって体温を一定に保つには難しくなるのです。

このため、小型の哺乳類は冬が来る前にたくさんの食べ物を食べて体脂肪をつけたり、食べ物を巣に持ち帰ったりして冬眠の準備を始めます。

哺乳類の冬眠のメカニズム

冬眠する哺乳類の場合、冬眠中は体から逃げる熱をできるだけ少なくするために、保つべき体温の設定温度を普段の設定温度よりずっと低くします。

設定温度を下げると、呼吸数や心拍数が減り、エネルギー消費量を節約でき、体から逃げていく熱が少なくなります。

冬眠して低い体温で過ごす方が 生存しやすいのだと考えられています。

シマリスの冬眠

リスの仲間は冬眠するものと冬眠しないものがいます。

シマリスは、冬の間は地面に掘った穴に入って冬眠しますが、冬眠に入る前、穴の中にドングリなどの食べ物を十分蓄えます。

冬眠中はときどき目を覚まして、蓄えておいた食べ物を食べ、穴から出ることなく冬を過ごします。冬眠する期間は約半年間です。

シマリスの冬眠には、冬眠特異的タンパク質 (HP:Hibernation-specific proteins)と呼ばれる物質が深く関わっていることが知られています。

HPは肝臓で作られ、暖かい時期には血液中のHP濃度が高くなります。

しかし、冬になると血液中のHP濃度は減少しますが、その一部が脳に移動し、脳の中では増えた HP が作用し、シマリスの体は冬眠状態になります。

シマリスが活動しているときの体温は約37℃ですが、冬眠中は5℃程度にまで低下し、エネルギー消費量は、体温37℃のときの100分の1にまで減少します。

シマリスは、ずっと冬眠し続けるのではなく、2~5日置きに目を覚まして蓄えたドングリを食べ、排泄もします。

冬眠は消費エネルギーを節約する以外にも利点があります。

それは外敵に襲われないことです。

リスなどの小動物の生存率は活動中では50%程度なのに対し、冬眠中の死亡率は5%以下になります。

このように冬眠は、小動物にとって生き延びるための非常に有効な手段になるのです。

クマの冬眠

世界中には8種類のクマがいて、そのうちヒグマ、ツキノワグマ、アメリカクロクマ、ホッキョクグマの4種類が冬眠することが知られています。

このうち、ヒグマとツキノワグマは日本にも生息しています。

クマは冬眠前にたくさん食べ物を食べて十分に脂肪を蓄え、自分で穴を掘って専用の部屋を作ったり、木にあいた穴などを利用してその中にもぐって冬眠します。

冬眠する期間は種類や場所によって違いますが、長いと5~6か月にも及ぶことがあります。

クマは冬眠のために一度穴にこもってしまうと、春に活動を始めるまでは一切何も口にせず、糞尿もまったくしません。

クマの冬眠は大きな特徴があります。

冬眠する他の小型の哺乳類が30℃近く体温が下がるのに対して、冬眠中のクマの体温はわずか数度しか下がらず、目覚めてすぐ動き出せる状態が続きます。

このため、クマの冬の過ごし方は、冬眠と区別して冬ごもりと呼ばれることもあります。

クマの冬眠のもう一つの大きな特徴は、メスグマのお腹に赤ちゃんがいる場合、冬眠の間に出産をし、生まれた赤ちゃんにお乳を与えて、冬眠しながら子育てをすることです。

クマは夏の初め頃に交尾をしますが、すぐには妊娠せず、冬眠前に栄養が足りている場合に初めて妊娠する仕組みになっています。

動物園のクマは冬眠するの?

動物園で飼われているクマは、餌が十分与えられるので、冬眠せず一年中活動します。

しかし、東京にある上野動物園では、より自然に近い環境で飼育するため、ツキノワグマの冬眠展示が行われています。

ツキノワグマの飼育舎は、気温が-5℃まで下げられ、冬眠用の穴に似せて作られた冬眠ブースにこもって冬眠します。冬眠ブースにはカメラが設置されていて、中の様子を見ることができます。

哺乳類の冬眠は謎だらけ

哺乳類の冬眠については、

・どのようなメカニズムで低体温が生じるのか?

・低体温でなぜ生きていられるのか?

・哺乳類の一部の動物だけがなぜ冬眠を行うのか、同じリスの仲間でも冬眠する種としない種がいるのか?

など、解明されていないことが多くあります。

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鳥が冬眠しない理由

鳥が冬眠しないのは、空を飛ぶために体のあらゆる部分の余分なものが削ぎ落とされ、軽くなるように進化してきました。

その結果、常に食べ続けなければ生きていけないようになっています。

ある一定の期間何も食べずにじっとしていることができないのです。

また、鳥は長い距離を空を飛んで移動することができるので、寒くなったら暖かい場所に移動するわたりができるということも冬眠しないことの理由になります。

人間は冬眠できるの?

人間は体温が30℃より低くなれば、神経や心臓などの重要な器官が正常に働かなくなって、生命の危険にさらされます。

また、人間の筋肉は、長期間使わずにいると衰えてひとりでは歩けなくなってしまい、長期間のリハビリが必要になります。

このように、人間は冬眠することはできませんが、冬眠の仕組みと人体についていろいろなことが研究されています。

例えば、冬眠する哺乳類は、同じくらいの大きさの冬眠しない哺乳類と比較して長寿であることが知られていて、冬眠できる状態になることが寿命と関係があるのではないかと考えられています。

また、冬眠中の哺乳類は、細菌が引き起こす病気にかからないという実験結果もあります。

冬眠の仕組みを利用することで、寿命を伸ばしたり、けがや病気を治せるようになったりする日がくるかもしれません。

変温動物の冬眠


爬虫類、両生類、魚類などの脊椎動物や昆虫、甲殻類、貝類などの無脊椎動物は、体温を調節することができない変温動物です。

寒い冬になって、その動物のいる場所の温度が0℃以下になれば、体温が0℃以下になる可能性もあり、体が凍って生命の危機にさらされます。

そのため、変温動物が冬を越すためには、じっとしていても、体が凍らないような場所で冬眠することが必要です。

そこで、多くの変温動物は冬眠する場所として地上よりも少し暖かく、温度変化が少ない土の中や水の底などを選びます。

冬眠中の変温動物は仮死状態のようになるため、活動することができません。

春になって暖かくなると、自然と体温が上がり再び活動できるようになり地上に姿を現します。

このように、変温動物の冬眠は、恒温動物の冬眠とは仕組みが大きく異なっているので、冬眠とは呼ばないで、冬越しとか休眠と呼ぶことがあります。

氷点下何十度にもなる北極圏や南極圏といった極寒の地域に生息している変温動物の場合、冬眠では体が凍るのを防ぐことはできません。

そのため、別の方法で命を守っています。

たとえば、北極圏で生活しているアメリカアカガエルは、体の水分中の糖分の割合を上げることで、凍りつかないような仕組みを持っています。

また、南極圏の海に生息するコオリウオという魚は、血液の中に不凍タンパク質と呼ばれる物質が含まれていて凍ることがありません。

まとめ

動物には冬眠する動物と冬眠しない動物がいます。

冬眠する動物は変温動物と恒温動物である哺乳類の一部の動物です。

冬眠する哺乳類はクマを除き、小型の動物です。

哺乳類の冬眠については多くの解明されていないことがあります。

変温動物の冬眠は、恒温動物の冬眠とは仕組みが大きく異なっているので、冬眠とは呼ばないで、冬越しとか休眠と呼ぶことがあります。

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