
出典:https://www.satofull.jp
小麦粉が爆発することがあるのをご存知でしょうか?
といっても、普通の状態では、爆発することはありません。
小麦粉が空中に大量に浮遊している場合に、ある条件下で爆発することがあります。
これは、粉塵爆発と呼ばれています。
ここでは、粉塵爆発の原理や、どのような条件で爆発するのか、小麦粉以外にどのようなものが爆発するのか、過去に起きた事例も記載しています。
粉塵爆発の原理
普通の状態では、爆発性がない可燃物が、ある状態になると爆発することがあります。ある状態とは粉末になるということです。
物質は微細になればなるほど、単位体積当たりの表面積が大きくなり、その物質が燃える時に、酸素が供給されやすくなります。
可燃性の粉末が空気中に漂っている状態を粉塵といい、粉塵に火がつくと、ある条件下で、爆発が起こることがあります。これを粉塵爆発といいます。
粉塵爆発は、粉塵が空気中にただ漂っているだけでは起こりません。
粉塵爆発が起こるには、粉塵、酸素、着火源の3つがそろうことが必要です。
これらのうち、1つでもなくなれば爆発は起こりません。
粉塵
粉塵爆発を起こす微粒子の大きさは、0.1~100μm(1μmは1mの100万分の1)といわれています。
小麦粉以外で粉塵爆発の可能性があるものとしては、石炭粉、砂糖粉、コーンスターチ、粉薬、コピー機に使われるトナーの粉、カラーパウダーの他、マグネシウム、アルミニウム、鉄などの金属の粉末やエポキシ樹脂などです。
酸素
物質が粉末になると、単位体積当たりの表面積が増え、酸素が供給されやすくなると、高速での燃焼が可能になります。
そして、火気があれば爆発的に燃焼し、爆発を起こします。物質は燃えることができるものであれば、爆発の可能性があります。
粉塵爆発は、空中に浮遊している微粒子が燃焼し、その燃焼が時間的に継続し、かつ空間的に伝播していくことで起きます。
浮遊する微粒子の粒子間距離が開き過ぎると、燃焼は伝播しません。
逆に、微粒子の密度が大き過ぎると、燃焼するための充分な酸素が供給されにくくなるので、燃焼が継続しません。つまり、いずれの場合も爆発は起きないのです。
爆発が伝播できる最低の密度を爆発下限濃度、燃焼が継続できる適度な隙間が開いている濃度を爆発上限濃度といいます。
ちなみに、小麦粉の爆発下限濃度は、約40g/m3、砂糖の爆発下限濃度は約35g/m3です。
着火源
着火源というと、マッチやライターの火を思い浮かべると思いますが、摩擦熱や静電気も火元になります。
舞い上がった粉塵にベルトコンベアーの摩擦で着火して爆発した事故例があります。
ですから、機械を導入していて粉状の物質を扱っている工場は、粉塵爆発の危険性がゼロではありません。
粉塵が舞っている室内に入ろうとして、手と金属の間に静電気の火花が散った瞬間に爆発が起きた例もあります。このため、静電気対策も必要となります。
粉塵爆発の例
炭鉱での粉塵爆発の例
粉塵が爆発を起こすのは、石炭業界では昔からよく知られた事故です。
採炭では、狭い炭坑の中で石炭を砕くので、石炭の粉が炭坑内にあふれます。
ここで静電による発火が起こると、石炭の粉が爆発します。
1899年には、福岡県の豊国炭鉱で日本で初めての炭塵爆発事故が発生し、死者210 名を出す大惨事となりました。
1963年には、福岡県の三井三池炭鉱三川坑で、死者458名、一酸化炭素中毒患者839名を出す戦後最悪の炭鉱事故が起こっています。
工場での粉塵爆発の例
1878年、米国のミネソタ州の製粉所で小麦粉が爆発し、2名が死亡しました。
1977年、米国のルイジアナ州にある穀物エレベーターで穀物の粉が爆発し6人が死亡しました。
2008年、米国のジョージア州にある砂糖工場で、精製中の砂糖粉が爆発し、死者8名、負傷者8名の事故となりました。
2010年、北海道苫小牧市の飼料会社工場内で、溶接作業の際の火が粉塵に引火したとみられる爆発事故が発生しました。
イベントでの粉塵爆発の例
2015年6月に台湾で行われた音楽イベントで観客席に向かって、まいていた、カラーパウダーが爆発し、400人近くが負傷しました。
カラーパウダーとは、色つきの粉のことで、原料はコーンスターチで、色は食物由来の色素で染められています。
体に無害ということで、イベントなどで、まかれることが多く、マラソンやコンサートなどでも使用されています。
まとめ
小麦粉などのように、可燃性の物質が粉状になると、単位体積当たりの表面積が大きくなり、空中に浮遊している状態で、着火すると粉塵爆発が起きることがあります。
粉塵爆発のほとんどは、炭鉱や粉を扱っている工場などで起こっています。
一般家庭で、少量の小麦粉や粉砂糖、粉薬などが、舞い上がっても粉塵爆発が起こることはありませんが、コーンスターチに色をつけたカラーパウダーのイベントなどでの使用は危険です。