電気設備や電気器具が原因で発生する火災を電気火災と呼びます。
東京消防庁管内だけでも、電気火災は毎年1000件前後発生しています。
このうち、 2013年中のトラッキング現象による火災は86件で、電気火災全体の約8%にのぼっています。
ここではトラッキング現象とはどのようなものか、また、トラッキング現象が起こらないようにするための防止対策ついて記載しています。
先ず、電気火災はどのような原因で起こっているのか見てみましょう。
電気火災の原因とは?
電気設備、電気器具が原因で発生する電気火災は以下のような原因で発生します。
・電源コードを過度に引っ張ったり、ねじれたまま使用したりして
断線やショートする
・電源コードの改造などで、ねじり接続により接触不良が生じたことに
よる異常発熱
・タコ足配線によりテーブルタップの許容電流をオーバーすることによる過熱
・漏電
・トラッキング現象
電気火災の原因の大部分は配線器具の誤った使用によるものですが、トラッキング現象は何もしなくても起こる怖い現象なのです。
トラッキング現象とは?
絶縁物でありながら、時としてそれが電気を導く通り道になることがあります。トラッキング現象がその代表例です。
電源のプラグやコンセントのカバーは電気を通さない絶縁物で覆われています。
トラッキング現象は、プラグやコンセントカバーの表面に水分を含んだホコリなどが付着して汚れ、プラグの刃の間に加わっている電圧により、絶縁物の表面に電流が流れてしまい、その結果わずかな火花放電が起こります。
これが繰り返されると絶縁物の表面が炭化して、電気が流れやすくなる炭化導電路が作られてしまいます。これがトラッキング現象です。
炭化導電路をトラック(track)と呼びます。トラック(track)というのは電気の通った跡というような意味です。
炭化導電路に電流が流れると、ジュール熱が発生したり、短絡状態となったりして過熱あるいは、発火が起こります。

出典:http://www.fctv-net.jp
トラッキング現象による火災は、タンスの裏などの隠れた部分で発生するため、発見が遅れて思わぬ被害につながる場合があります。
トラッキングにより火災が発生する様子はNITE(製品評価技術基盤機構)による下記動画参照ください。
トラッキング現象が発生しやすい時期
トラッキング現象は、ホコリと湿気があれば季節や時期に関係なく起こる可能性があります。
特に、湿気の多い6月から7月にかけての梅雨の時期はトラッキング現象が発生しやすい時期となります。
トラッキング現象の防止対策
定期的な清掃
トラッキング現象の原因はホコリですから、先ず定期的な掃除をすることが大切です。
長時間差したままの電源プラグは、定期的に点検し、乾いた布などでホコリを除去するようにしましょう。
特にホコリや湿気の多い環境で使われているものや、家具等の裏に隠れているものは要注意です。また、使用していない電気器具の電源プラグはコンセントから抜くようにしましょう。
また、ACアダプターなどの重さのある大きなプラグは、しっかり差されていないと、それ自体の重みでコンセントとの間に隙間ができてしまい、ホコリが溜まりやすくなります。
このため、コンセントとプラグの間に隙間ができないよう、しっかりと差しておきましょう。
防水コンセント
雨のかかりやすいところでは、防水コンセントを使用しましょう。
トラッキング現象防止グッズ
プラグの刃にキャップをかぶせる
プラグの刃の根元にキャップをかぶせて絶縁することで、トラッキング現象が起こるのを防ぐことができます。
刃の部分に取り付けるので、プラグの大きさに関係なく取付け可能で、通常の電源プラグだけでなく、ACアダプターにも使用可能です。
トラッキング現象防止機能付きテーブルタップ
トラッキング現象を防止するために、差込口にはホコリの侵入を防止するシャッターが付いていて、プラグ部分には絶縁キャップがついているテーブルタップが販売されています。
最近のトラッキングに関する動向
経済産業省は、電源プラグにほこりがたまって発火するトラッキング現象防止のため2016年3月18日か ら全ての家電製品にプラグの耐火性試験を義務付けることになっています。
これに先立って単体で販売する電源プラグは、2015年9月18日から耐火性試験が義務化されます。
水が付着しやすい冷蔵庫や冷凍庫用の電源プラグはすでに耐火性試験を義務付けており、これを全ての家電製品に広げます。
まとめ
トラッキング現象による火災を防止する対策としては、先ず定期的にコンセントと電源プラグの間の掃除をすることが必要です。それとともに、トラッキング現象を防止するグッズの購入も考えてはいかがでしょうか。