探知犬といえば、すぐ思い浮かぶのが麻薬探知犬です。
しかし、最近では空港などの検疫で探知犬が活躍しています。
海外旅行の経験のある方は見かけたことがあると思います。
空港の検疫に探知犬が導入
検疫は空港や港で海外から国内に持ち込まれたり、海外へ持ち出される動物、植物、食品などが、鳥インフルエンザや口蹄疫などの病原菌や有害物質に汚染されていないかどうかを確認することで、農林水産省の管轄です。
旅行中の弁当やおやつ、土産用の鶏肉、ソーセージ、ジャーキーなどを持ち込む例が多いそうです。
海外では米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、台湾などでは検疫に探知犬が導入されています。
日本では2005年に成田空港に初めて2頭の検疫探知犬が導入されました。
現在では成田空港以外に関西国際空港、羽田空港、福岡空港、中部国際空港、新千歳空港、那覇空港などで探知犬が活躍しています。
2016年5月より羽田空港、関西国際空港に各2頭増え、探知犬の数は全国で合計22頭になりました。
検疫探知犬の犬種は?
検疫探知犬は輸入が禁止されているものや検査が必要な肉製品、農作物を嗅ぎ分けて発見する訓練を受けています。
ターンテーブルから移されるスーツケースや旅客手荷物を嗅いで、怪しいと感じると、その荷物の横にお座りをして、ハンドラー(探知犬の世話や探知業務を行う人)に知らせます。
探知が正解だった時はご褒美のおやつがもらえることになっています。
日本国内にいる22頭の犬種は全てビーグル犬です。
ビーグル犬は犬の中でも特に嗅覚が優れている犬種で、食べ物に対する執着心が強く、人懐っこい性格で、体が小さくてかわいらしいので、空港のような人混みでも邪魔にならず、旅行者に恐怖心を与えないので探知犬に向いているのです。
検疫探知犬はどこで訓練するの?
予算の関係で現在は日本に訓練する施設はありません。
米国、オーストラリアでトレーニングを行っています。
検疫探知犬の摘発実績
2014年度の各空港における探知犬による摘発実績は以下のようになっています。
全摘発件数の約4分の1が探知犬により見つけ出され、素晴らしい実績を上げています。
成田国際空港・・・3,410件
羽田国際空港・・・2,813件
関西国際空港・・・2,991件
中部国際空港・・・2,102件
福岡国際空港・・・ 142件
犬の嗅覚はどれほど凄いの?
犬の嗅覚は人間より1000倍~1億倍優れているといわれています。
倍率に幅があるのは、匂いの種類により得意な匂いと不得意な匂いがあるためです。
自然界に存在しないような化学物質など、犬にとってはどうでもよい匂いに対しては鈍感で、動物が発する有機物の匂いには敏感だといわれています。
人間も犬も、鼻腔内に嗅上皮と呼ばれる粘膜層を持ち、この中に匂い情報を脳へと伝える嗅細胞(きゅうさいぼう)があります。
人間の嗅細胞の数は約500万個ですが、犬の嗅細胞の数は約2億2千万個と、人間より圧倒的に多いのです。
嗅細胞の数は犬種によっても異なっていて、ダックスフントは1億2500万個、ジャーマンシェパードやビーグルは2億2500万個、ブラッドハウンドでは3億個にまで達します。
犬には多くの匂いが混ざっていても、各々の匂いをかぎ分けることができる、匂いの階層化という特殊な能力があるといわれます。
これは、例えば料理の匂いを嗅ぐと、その料理に含まれる個々の食材の匂いまでかぎ分けることができるのです。
犬の嗅覚を生かした他の利用
犬の優れた嗅覚は検疫以外にいろいろなところで利用されています。
麻薬探知犬
麻薬探知犬は検疫とよく似ていますが、空港や港などで活動していて、覚せい剤、大麻などの不正薬物の摘発に貢献しています。麻薬探知犬は財務省の管轄です。
警察犬
警察犬は犯人の匂いや犯人の触ったものの匂いから犯人を追及、追跡する活動や、
犯罪現場の遺留品と容疑者の匂いを照合して犯人を特定する臭気選別活動や
迷子、行方不明者、遭難者などを匂いから発見する捜索活動を行います。
ガン探知犬
がんには独特の匂い物質があることが知られています。この匂い物質を犬が嗅ぎ分けることにより、ガンを早期に発見しようという研究がすすめられていて、驚異的な検知率が世界で注目されています。
残念ながらこの独特の匂い物質の正体はまだ解明されていません。
最後に
空港へ行く機会があって、探知犬が探知活動をしているのを見かけても、声をかけたり、手で触れたり、写真撮影はしないようにしましょう。
犬の集中力が散漫になって、探知業務に支障をきたすからです。