自ら光を放つ星を恒星と呼びますが、恒星には明るいものから暗いものまで、いろいろな明るさを持つものがあり、明るさの単位として、1等星、2等星などと呼びます。
一方、等級という単位もあります。
これらはどのように違うのでしょうか?
1等星…6等星の決め方
紀元前150年頃、ギリシャの天文学者ヒッパルコスが、肉眼により、夜空で最も明るい恒星を1等星、次に明るい星を2等星、確認できる限界の暗い恒星を6等星としました。
現在までに見つかっている6等星までの恒星の数を明るさ別に分類すると、以下のようになります。
1等星:21個
2等星:68個
3等星:183個
4等星:585個
5等星:1858個
6等星:5503個
等星と等級の関係
19世紀の天文学者ポグソンは、恒星の明るさを定量的に測定したところ、1等星の明るさは6等星の約100倍明るいということが分かりました。
この結果から、5等級差は100倍の明るさ、1等級差は対数スケールで5等分して、
1等級差=100の1/5乗=2.512と定義しました。
この定義から、例えば1.5等級のように中間的な明るさも連続的に等級で表示できるようになり、6等級よりも暗い恒星でも、明るさを表すことができるようになりました。
また、1等級より2.512倍明るい星は0等級、0等級よりも明るい場合には負の数を用います。
0等級より2.512倍明るい場合には-1等級となり、マイナスの場合は、数字が大きくなるほど明るくなります。
ちなみに満月は-12.7等級(平均)、太陽は-26.7等級です。
慣習的に1.5等級よりも明るい恒星は、ひとくくりにして1等星と呼んでいます。
最も暗い1等星のしし座のレグルスは1.36等級、最も明るい1等星のおおいぬ座のシリウスは-1.44等級で、同じ一等星でも2.8等級 =13.2倍も明るさに差があります。
2等星、3等星…6等星の等級nは以下のようになります。
2等星:1.5等級≦n<2.5等級
3等星:2.5等級≦n<3.5等級
6等級:5.5等級≦n<6.5等級
等級の基準は、かつて、北極星やこと座のベガが選ばれたことがありましたが、現在は、決められた色フィルターで複数の基準星を撮影して得られた光度を基準にして等級が決められています。
見かけの等級と絶対等級
等級はあくまで、地球から見た時の明るさで表しています。
地球から各恒星までの距離はさまざまですから、見かけの等級が本来の星の明るさを表しているわけではありません。
星の本当の明るさを表すときは、その星が地球から10パーセク(=32.6光年)の距離にあるときの明るさを用いることが決められていて、その時の等級を絶対等級と呼びます。
絶対等級に対して、見かけの等級を実視等級または視等級と呼ばれます。
星の明るさは、距離の2乗に反比例します。
これは、逆2乗の法則の一例です。
逆2乗の法則
逆2乗の法則は、ある物理量の大きさがその発生源からの距離の2乗に反比例する、という法則です。
星は一つの光源とみなすことができます。
光源の中心から、半径rの球を考えると、球の表面積は(4π×r×r)で表されます。
球の単位表面積当たりに通る光の量(エネルギー)は、表面積(4π×r×r)の逆数に比例しますから、結局、明るさは距離rの2乗に反比例します。
絶対等級が1等級の星を 326光年先から見ると、距離が10倍で明るさは100分の1、すなわち6等級に見えます。
逆に、同じ星を3.26光年の近さから見ると、-4等級(金星と同じ明るさ)と同じくらいの光度になり、ずいぶん明るく見えることになります。
絶対等級は見かけの等級から以下の関係式で算出できます。
絶対等級 =見かけの等級+5-5log(星までの距離[パーセク単位])
太陽や夏の大三角のベガ、アルタイル、デネブ、先に出てきた、しし座のレグルス、、おおいぬ座のシリウスについて、見かけの等級と地球までの距離から、上式により求めた絶対等級は以下のようになります。
太陽
見かけの等級:-26.7
地球までの距離(パーセク) =0.000004848
ベガ
見かけの等級 0.03
地球までの距離(パーセク)=7.68パーセク
絶対等級 0.582
アルタイル
見かけの等級 0.77
地球までの距離(パーセク)=5.13
絶対等級2.21
デネブ
見かけの等級 1.25
地球までの距離(パーセク)=802
絶対等級 -8.73
レグルス
見かけの等級 1.36
地球までの距離(パーセク)=23.8
絶対等級 ?0.529
シリウス
見かけの等級 -1.44等級
地球までの距離(パーセク)=2.64
絶対等級 1.434
まとめ
星の明るさを表す単位として、紀元前150年頃、ギリシャの天文学者ヒッパルコスが、肉眼により、夜空で最も明るい恒星を1等星、次に明るい星を2等星、その次に明るい星を3等星、確認できる限界の暗い恒星を6等星としました。
19世紀になると、天文学者ポグソンは、恒星の明るさを定量的に測定したところ、1等星の明るさは6等星の約100倍明るいということが分かりました。
この結果から、5等級差は100倍の明るさ、1等級差は対数スケールで5等分して、1等級差=100の1/5乗=2.512と定義しました。
これらの明るさは、地球から星までの距離が各々異なる、見かけの明るさで、実視等級または視等級と呼ばれます。
星の本当の明るさを表すときは、その星が地球から10パーセク(=32.6光年)の距離にあるときの明るさを用いることが決められていて、その時の等級を絶対等級と呼びます。