桜が秋に花が咲くことがあるのはなぜ?

桜の花は、通常、春に咲き、秋には咲きません。しかし、ごく稀に、秋に花が咲く場合があります。

ここでは、これらがどのような仕組みに基づいて起こっているのか記載しています。

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桜のツボミはいつできるの?

桜の花は春に咲くので、桜のツボミは春の開花の少し前に作られるように思うかもしれませんが、実は開花する前年の7、8月の夏頃に作られます。

ですから、秋には、すでにツボミができています。

これは、桜だけに限ったことではなく、梅、ハナミズキ、コブシなどの春に花が咲く樹木のほとんどは、開花する前の年の夏から秋にかけてツボミが作られます。

桜はなぜ秋に花が咲かないの?

夏にツボミができていれば、なぜ秋に花が咲かないのでしょうか?

秋に桜の花が咲くと、もうすぐやってくる冬の寒さのために、種子は作られないので、子孫を残すことができません。

桜はツボミが開花したのに子孫を残せないという結果に終わることがないように、桜の木は秋には花を咲かせず、ツボミを越冬芽という硬い芽の中に包み込みます。

秋に花を咲かせる植物として、キクやコスモスなどがありますが、これらの植物は花を咲かせて種子を作るまでの期間が短いのです。

そのため、秋に花を咲かせても、冬がくる前に種子を作り終え、子孫を残すことができるのです。   

しかし、桜は花を咲かせて種子を作るのに、長い日数がかかるため、秋に花を咲かせない仕組みを備えているのです。

桜が秋に花を咲かせない仕組み

桜は夏にツボミを作った後、夏から秋と季節が変わるにつれて、夜の長さが次第に長くなっていきます。

桜の葉は、夜の長さを測ることができます。

夜の長さを測ることができれば、冬の寒さの訪れを前もって知ることができるのです。

夜の長さは、6月下旬の夏至の日を過ぎると、だんだんと長くなり始めます。

そして、夜の長さが最も長くなるのは12月の下旬の冬至の日です。

これに対し、冬の寒さが最も厳しいのは1月下旬から2月上旬頃です。

夜の長さの変化は、冬の寒さの訪れより、1ヵ月余り先行しているのです。

ですから、葉が夜の長さを測っていれば、冬の寒さの訪れを先取りして知ることができるのです。

植物は、動物の神経のような刺激の伝達手段をもっていません。そこで、夜の長さに応じて、葉がアブシシン酸という物質をつくり、師管と呼ばれる通路を通じて芽に送ります。

葉が光合成によりできた栄養分を芽におくるのもこの師管を通じて送られます。

芽にアブシシン酸の量が増えると、ツボミを包み込んだ越冬芽ができるのです。
この時、ツボミは休眠状態に入ります。

こうして、夏にできたツボミは、越冬芽に包み込まれて春を待ちます。

このようなきちんとした仕組みで越冬芽ができ、ツボミが包み込まれるのですから、秋に花が咲くことはないのです。

ところが、秋に桜の花が咲くことがあります。秋に花が咲かないきちんとした仕組みがあるのに、なぜ、桜の花が秋に咲くことがあるのでしょうか?

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桜がなぜ秋に花が咲くことがあるの?

桜は春に花が咲きますが、時として秋に花を咲かせることがあります。

秋に花を咲かせた桜について、調べてみると、多くの場合、夏に毛虫が大量に発生して、葉がほとんど食べられてしまったとか、何か他の理由で、葉が枯れ落ちてしまったとかということと関係があります。

夏に葉がなくなってしまうと、秋になっても、夜の長さは感じられず、アブシシン酸が作られません。そのため、芽にはアブシシン酸が送られてきません。

芽のアブシシン酸の量が増えないと、越冬芽がつくられず、ツボミは越冬芽に包み込まれることはありません。ですから、春と同じような秋の暖かさの中で、花が咲いてしまうのです。

秋に桜の花が咲くという現象は、多くの場合、夏に葉がなくなることが、その原因になります。

ツボミが単純に季節を間違えて起こっているわけではなく、桜のきちんとした仕組みに基づいて起こっているのです。

桜はなぜ春に花が咲くの?

桜では、夏につくられたツボミが、秋に越冬芽に包み込まれて冬を越します。

この時ツボミは休眠状態に入っています。

眠っている越冬芽は、眠りから目覚めるためには、冬の寒さを感じることが必要です。

眠りの状態は冬の寒さを感じると打ち破られ、ツボミは眠りから目覚めます。

ツボミが日覚めると、暖かさに反応して、開花が起こります。

冬の寒さを感じる前の越冬芽の中には、越冬芽をつくるために葉から送られてきたアブシシン酸が多く含まれています。これは、芽を眠らせ、開花を抑制する物質です。

寒さを感じることで、アブシシン酸は分解されて消失します。この状態になると、ツボミは目覚めます。

一方、冬の寒さを感じた後に、暖かくなってくると、ツボミの中にジベレリンという物質が作られてきます。

ジベレリンは、ツボミの成長を促し、開花を促進する物質です。

春に開花するためにツボミの中で起こる変化とは、ジベレリンが作られることです。

寒さを感じることにより、ツボミは開花できるように日覚めた状態になります。そして、暖かくなるにつれて、開花を促す物質であるジベレリンが合成されて、開花が起るということになります。

以上のように、桜はツボミができた後の秋には花が咲かず、翌年の春に咲くような仕組みがあります。

桜が秋に咲くことがあるのは、桜が季節を勘違いして咲いたのではなく、多くの場合、夏に葉がなくなったことがその原因になります。

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