竹は花を咲かせることがあることをご存知でしょうか?
竹の花が咲くのは、不吉なことが起る前触れであるという言い伝えがあります。
これは、なぜなのでしょうか?
竹の花が咲くと不吉なことが起る前触れなの?
竹は、めったに花を咲かせることはありません。
そして、珍しいタケの花が咲くと一面に広がっていた広大な竹林が一斉に枯れてしまうのです。
また、タケの地上に出ている部分は、1本1本独立しているように見えますが、土の中では、それらがすべて地下茎でつながっていて、広大な竹林の竹が、すべて同じ地下茎でつながっているということも、けっして珍しいことではありません。
これらの竹が一斉に花を咲かせると、広大な竹林の竹の地上部だけでなく、地下茎もすべて一斉に枯れてしまいます。
枯れた翌年には回復笹と呼ばれる小さな笹状の地上茎が多数発生し、次第に大きくなり回復していきますが、放置しておくと完全に回復するまでに約10年かかるといわれています。
このように、竹の花が咲くと、竹林全体の竹が枯れ、元の状態に回復するまでに長い年月が必要だったことから、昔の人は、竹が花を咲かせると、開花病、十年枯病などと呼び、気味悪がり、天変地異など不吉なことの前触れだといって恐れたのです。
竹の花とは?

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竹の開花は、突然起こると思われていますが、その予兆として、春のタケノコの発生が極端に少ないとか、小さくて細い竹しか生えてこない、葉柄(葉を支えている枝)から葉にかけて異常があるといったようなことがあります。
竹の花は、6~7月頃に咲き、イネの花によく似て花弁がなく、地味で、オシベが外側にぶら下がり、内側にメシベがあります。
竹の花を見たことのない人は、たとえ花が咲いていても、それに気づかないことが多いようです。
竹が開花後、種子がとれてもマダケのように不稔性種子が多く、撒いても、ほとんど発芽しません。
また、モウソウチクでも、発芽処理を行った後、撒いても、1%くらいしか発芽しません。
このように、竹はたとえ花が咲いて、できた種子を撒いたとしても、そこから、竹を育てることは、非常に難しいのです。
竹の花はなぜ咲くの?
竹の花が咲く理由については、いくつかの説があります。
病虫害
竹が開花するのは異常なこととみなされ、竹が病虫害にかかると、一斉に開花するのではないかという説がありますが、開花と病虫害との間に因果関係は認められていません。
竹のC/N比
竹が長い間、同じ土地で生息すると、土壌中の窒素が不足して、その結果、竹の体の中の炭素と窒素の比 (C/N比)が大きくなると花が咲くのではないかという説があります。
花をつけた竹と花をつけていない竹のC/N比を測定してみると、花をつけた竹は圧倒的にこの比が大きいですが、人為的に窒素の供給を少なくして C/N比を高めても、開花しないことから、C/N比だけで竹の開花を説明するのは難しいようです。
竹特有の周期性
植物には何度も花を咲かせる多回繁殖性のものと、一度花を咲かせて枯れてしまう一回繁殖性のものがあります。
竹は、花を咲かせて種子を残すと枯れてしまう一回繁殖性の植物で、その開花時期は、竹特有の周期性によって決まるのではないかという説です。
現在は、この説を支持する多くの実験や観察があり、これが定説となっています。
竹の開花周期
日本でのマダケは1963年頃から一斉に開花し、その後枯れてしまいました。
同じ時期にアメリカや韓国でも、マダケが開花しました。これらのマダケは、日本から持ち出されたものであろうと推定されています。
竹の研究者の上田弘一郎氏 によると、1844年から1846年にかけて、日本でマダケが全国的に開花した後に枯れ、竹不足を生じたことが古文書に記載されているそうです。それから数えると、1963年は117年目にあたります。
また、モウソウチクについては、1912年に開花後、とれた種子によって、異なる場所、異なる環境で育った4箇所のモウソウチクが、67年後の1979年に一斉に開花したことが記録から明らかになっています。
これら以外に、古くから、マダケ、ハチクは120年、ホウライチクは60~120年、オカメザサは40年を周期として開花するといわれています。
以上のように、竹が花を咲かせるのは、竹特有の開花周期によるものであり、昔からいわれている、竹が花を咲かせると不吉なことが起きる前触れという言い伝えは、正しくありません。
それにしても、竹の節々から出てきた竹稈の寿命は約10年です。また、地下茎も古いものは枯死していくことを考えると、竹の40~120年という長い開花周期を竹自身がどのようにして、知ることができるのか、不思議な気がしますね。