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飛行機は天候が悪いと遅延したり、場合によっては欠航したりすることがあります。
雷による悪天候もその一つです。
本記事では、飛行機に雷が落ちることはあるのかどうか、また、落ちたら飛行機はどうなるのかどうかについて記載しています。
飛行機に雷は落ちないの?
落雷は、雷雲と大地との間以外に、雷雲の内部でも起こります。
雷が発生する仕組みについては、
記事「雷が発生する原理とは?音はなぜ鳴るの?」を参照してください。
飛行機は地上約1万mの上空を飛行します。
一方、積乱雲などの雷雲の高さは、数千mから1万5千mと、飛行機が飛ぶ高さと同じくらいの高さに浮かんでいます。
飛行機のパイロットは飛行中、前方にある雲を目視で監視したり、飛行機に搭載している気象レーダをチェックして、積乱雲などの雷雲に近づかないように注意して飛んでいます。
空港周辺の空域は、離着陸する飛行機で混雑しているため、離陸してから巡航ルートに入るまでと、空港に近づき、空港に着陸するまでの一定期間は、決まったルートを飛ばなければなりません。
このような時に、雷雲の中を飛行し、被雷することがあります。
飛行機の被雷のほとんどは、雷雲の中を飛行している時に、機体が雲内放電の通路になって放電します。
1986年から1997年の間に、当時の日本の主要3航空会社だけで約1300件の被雷があったという報告があります。
この件数はパイロットが気づいたものだけであり、実際には飛行した後の点検整備で機体に雷が落ちた跡が見つかる場合もあり、実際の被雷数はこれよりも多いです。
被雷箇所の多くは機首部分です。レーダを格納しているレドームと呼ばれる箇所が約2割、その他の機首部分が約5割、胴体と翼部分が約1割ずつとなっています。
飛行機に雷が落ちたらどうなるの?
雷が飛行機に落ちて、機体の一部が損傷することはありますが、ほとんどの場合、その後の飛行に支障をきたすことはなく、落雷が直接の原因で、墜落などの大事故につながることは世界的にも稀です。
これは、飛行機の機体や主翼は、金属で囲まれ、その内部の空間では外部の電気の影響を受けないという特性を持っているからです。
このように金属で囲まれた構造をファラデーケージ構造と言います。
そのため、飛行中に被雷しても、雷の電流は金属部分を通過して空気中に流れ去ってしまい、機内の人間や電子機器などは金属でできた機体で守られていて、安全なのです。
また、電気は飛行機の尖っている部分から抜けていく傾向があるので、主翼や尾翼にスタティック・ディスチャージャーと呼ばれる細い針のようなものが、ひとつの飛行機に合計で20から30本ほど設置されていて、飛行機がなるべく被雷しないような対策がされています。
ファラデーケージとは?
電気を通しやすい金属の板やメッシュ状の目の細かい網で物体全体を囲んで、外部から電流を流した場合、その金属には電流は流れますが、内部の物体には電磁気的な障害を与えることはありません。
これは、ファラデーによって確認されたシールド(遮蔽)現象であることから、ファラデーケージと呼ばれています。
ファラデーケージで取り囲まれた場合、基本的に内部への被害はありません。
ファラデーケージで内部に電流が流れないのは、外表面がすべて金属で囲まれているために、その表面はすべて同電位となっているためです。
飛行機に限らず、自動車、金属でできた船舶など、ファラデーケージ構造のものは、その内部は安全です。
しかし、ファラデーケージに接触すると危険です。接触しなくても、金属部との距離が近いと放電するため危険です。
最近では、飛行機、自動車、船舶などで、軽量化のため、金属以外の素材として、炭素繊維強化プラスチックなどが使用されることがあります。
炭素繊維の導電性は一般的な金属と比較し、100倍から1000倍も電気を通しにくく、問題が生じる可能性があります。
また、飛行機などの各種の制御には、電子機器が多用されるようになり、被雷時に流れる電流で生じる電磁界による影響が出る可能性もあります。
最新の飛行機の設計には、これらの要素も検討されているようです。
まとめ
飛行機のパイロットは、気象レーダをみて、できるだけ雷雲に接近しないように運行していますが、場合によっては、雷雲の中を通過しなければならない時があり、このような時に被雷することがあります。
飛行機が被雷を受けて、機体の一部が損傷することはありますが、ほとんどの場合、飛行に支障をきたすことはなく、大事故につながることは世界的にも稀です。
これは、飛行機がファラデーケージ構造となっていて、機内の人間、電子機器などは守られているためです。
以上、本記事では、飛行機に雷が落ちることはあるのかどうか、また、落ちたら飛行機はどうなるのかどうかについてご紹介しました。
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