タンポポ(蒲公英)は、キク科の多年生植物で、広場の芝生、歩道の脇など人に踏まれそうな場所でよく見かけます。
タンポポは背が低く、近くに他の植物があると太陽の光が当たらず、光合成がうまくできないので生きていくことができません。
このため、人通りが多く、普通の植物では、踏んづけられて枯れてしまいそうな場所に生えていることが多いのです。
タンポポは丈夫で、少々踏まれても、しおれたり枯れたりしないように、深く根をはり、たくましく生きています。
タンポポの特徴の一つは、そのタネが綿毛をつけていることです。
ここでは、タンポポの花が咲いた後、綿毛のできるまでの過程や綿毛の構造、時期などについて記載しています。
綿毛ができる時期
在来種である日本タンポポは冬を越した後、暖かくなってきて、3月中旬~5月頃に花を咲かせます。

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花は3日間程咲き、咲き終わると、しおれて綿毛をつける準備に入ります。
開花時、萼片(がくへん)は白い糸状で、その下に子房があります。花が咲き終わると、萼片は綿毛へ、子房は痩果へと成熟します。
その際、冠毛(綿毛)と痩果 をつなぐ冠毛柄が伸びていきます。
花が咲き終わると、花茎は地面に横たわり、花茎を通して根や葉から花に養分を送り、約2週間経過して、綿毛がふくらむ頃に花茎が再び立ち上がります。
この運動は、エネルギーを節約しながら効率よく受粉し、タネ作りを行うシステムだと考えられています。
立ち上がった花茎は花がついていた時より、伸びて高さが高くなります。これは、風を受けやすくして綿毛を遠くまで飛ばすためと考えられています。
綿毛が飛ぶ時期は開花時期から2週間遅れの4月~6月頃になります。

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綿毛の構造

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タンポポはタネがついた綿毛を風にのせ、遠方にタネを飛ばすことで子孫を残しています。
球状の綿毛から、1本を抜き出すと先端に乾燥した、数mmのタネのようなものがついています。正確には、これはタネではなく、果実です。
果肉がついていない痩果(そうか)という乾いた果実です。果肉の皮とタネの皮がくっついている状態です。痩果の皮をむけば、ほんとうのタネが入っています。
タンポポの綿毛は何本にも枝分かれしたホウキのような形をしています。
この綿毛の形は風が抜け、安定してより遠くに飛ぶことができるような構造になっています。
綿毛の飛ぶ距離
植物は動くことはできませんが、タネを遠くへ飛ばすことにより、仲間を増やすことができます。
タンポポの綿毛は、一説によると、風速10mの風では、10kmも飛ばされることもあるようで、わずか風速0.5mの風があれば、いつまでも落ちずに空気中に漂うことができるので、たいていの綿毛はかなり遠くまで飛ばされます。
タンポポ以外で綿毛のある植物
タンポポの痩果についている綿毛のことを冠毛といい、これは萼片が変形したものです。
綿毛を作ってタネや果実が空を飛ぶものは、多くの植物で知られていて、綿毛にもさまざまな種類があります。
例えば、ガガイモの綿毛は種皮が変形したもので種髪といいます。
オキナグサやチングルマなどの綿毛は、花の後のオシベが羽毛状になったものです。
ガマやヒメガマなどでは、子房の下に生じた長い毛が綿毛になります。
ススキは小穂の基部にできた毛で風に乗ります。
植物の綿毛はどれも似ているように見えますが、でき方は種類により大きく異なっているのです。
風で飛ばされるタネは、小さくて軽いほうがよく飛びますが、タネが小さいと、発芽に必要な栄養分が少なくなるので、発芽後の生存率や成長速度が低下します。
風で運ばれた場所が生育に向かない可能性もあるので、タネはたくさん作られ、飛ばされることになります。
下記動画では、タンポポの花が咲いて綿毛ができるまでの状況を、約1分30秒で見ることができます。
綿毛に似たもの~ケセランパサラン
江戸時代から言い伝えられる謎の生物にケセランパサランと呼ばれるものがあります。
ケセランパサランは白い毛の生えた玉で、ふわふわと空中を舞い、妖怪であるとも、未確認生物であるともいわれ、その正体はまったくの謎です。
ケセランパサランを持っていると、幸せになると言われていますが、それを他人に言うと、効力がなくなると信じられているので、誰にも明かされることがありません。
ケセランパサランの正体については諸説あります。
たとえば動物の毛玉であるという説があります。
ワシなどの猛禽類が消化しきれなかった動物の毛を吐き出したペレットは、毛皮の皮膚の部分が縮まり、毛玉のようになるそうです。
また、白い綿毛をつけてふわふわと飛ぶ雪虫ではないかという説もあります。
ケセランパサランの正体は不明ですが、その目撃例として多いのが植物の綿毛を見間違えたものでした。
先に記したように、植物の中には、綿毛のついたタネを風に乗せて、散布させるものが多くあります。
1970年代には、ツチノコやUFOなど、未確認の存在がブームを呼びました。その時代には、植物の綿毛をケセランパサランだと勘違いする人が多かったようです。
まとめ
タンポポの特徴の一つは、綿毛にタネをつけて遠くまでタネを飛ばすことです。
花が咲き終わると、花茎は倒れて横たわります。花が咲き終わると、萼片は綿毛へ、子房は痩果へと成熟します。
約2週間経過すると花茎が再び立ち上がり、綿毛が飛び立ちます。
綿毛はホウキのような形をしていて、風が通って遠くまで飛べるような構造をしています。
在来種の日本タンポポの場合、開花時期は3月中旬から5月です。
花が咲き終わってから、綿毛が飛ぶまで2週間程度かかるので、綿毛が飛ぶ時期は4月から6月くらいになります。