渋柿と甘柿との違いは?見分ける方法は?

国の象徴として国花、国鳥、国石などが定まられていて、日本の国花は桜と菊、国鳥はキジ、国石はヒスイです。

そして国果(国の果物)というものもあります。実は日本の国果は柿なのです。

柿はこのように日本人にとって身近な果物ですが、柿については案外知らないことが多くあるのです。

その一つが渋柿と甘柿の違いです。

ここでは、渋柿と甘柿の違い、その見分け方、渋抜きの方法などについて記載しています。

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渋柿と甘柿の違い

柿は大きく渋柿と甘柿に分けることができます。

元々柿は全て渋柿だったのですが、突然変異による甘柿ができたのだといわれています。

鎌倉時代に、神奈川県川崎市で突然変異による甘柿が発見されました。

甘柿は遺伝的に渋柿よりも弱いため、新品種を作ることが難しく、干柿にして食べられていました。そのままの状態で甘柿を食べるようになったのは歴史的には最近のことです。

渋柿と甘柿では、果実が実ってから、甘みを持つようになるまでの時間が異なります。

柿の持つ渋味は、ポリフェノールの一種であるタンニンによるものです。特に柿に含まれるものを柿タンニンと呼びます。

タンニンは渋柿、甘柿のどちらにも存在する成分ですが、渋柿のタンニンは水に溶けやすい性質(可溶性)があり、食べるとタンニンが唾液により溶けるので、渋みを感じるのです。

柿の果実が熟していくと、タンニンは水に溶けやすい性質から水に溶けない性質(不溶性)に変わるため、舌は渋味を感じなくなり、甘さを感じるようになります。

渋柿は、熟しても果肉が硬い間はタンニンが可溶性のままなので、食べると渋味を感じますが、熟柿と呼ばれる完熟した状態になるとタンニンが不溶化して渋みを感じなくなって、甘みを感じるようになるのです。

甘柿や渋柿はタンニンが不溶化するタイミングにより、以下のように細分化されます。

完全甘柿…種子ができる前から甘くなる

不完全甘柿…種子ができると甘くなる

不完全渋柿…種子ができるとその周囲だけが完熟しなくても甘くなる

完全渋柿…種子ができても渋いままで、完熟するまで甘くならない

柿は熟すとなぜ渋みがなくなるの?

柿をはじめとする植物は自分で移動することができません。

果実に動物たちの好む甘味があれば、動物はそれを食べ、消化できなかった種子だけを糞として排出するので、植物は動けなくても種子がばら撒かれ、子孫を残すことができるのです。

種子が育つ前に果実を食べられると柿は困るので、未成熟な果実には渋みがあることにより、食べられなくしているのです。

種子ができないうちから甘くなる完全甘柿は、人間にとっては好都合ですが、柿の立場からは生存が脅かされ、非常に不本意な状態なのです。

渋柿と甘柿の見分ける方法

渋柿と甘柿は外観だけで見分けることはできません。

しかし、食べなくても柿を切って断面を見れば渋柿か甘柿かは見分けることができます。

甘柿

甘柿のタンニンは柿の実が未熟なうちから不溶化してきます。タンニンは不溶化すると、茶色の粒状になります。

このため、柿の実の断面に茶色の粒状のものが見られたら甘柿です。

渋柿

渋柿は実に種子が入っても完熟しないと水溶性タンニンから不溶性タンニンに変わりません。

水溶性タンニンは、目には見えないので、柿の実の断面に茶色の粒状のものがなかったら、渋柿と判断できます。

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渋柿の渋抜き~甘くする方法

先に記したように、渋柿と甘柿は果実に含まれているタンニンが可溶性から不溶性に変わるタイミングが早いか遅いかの違いです。

渋柿でも完熟すれば、タンニンは不溶性に変わるため、甘くなり食べることができます。

以下に記している渋柿の渋(=タンニン)を抜くやり方はいずれも、タンニンを可溶性から不溶性へ促進させる方法です。

アルコール

渋抜きの方法として一番よく用いられているのが、アルコールを使った方法です。

渋柿のヘタの部分にブランデーや焼酎などの濃度の高いアルコールを塗って放置しておくだけです。

可溶性タンニンはアセトアルデヒドと結合することによって不溶化されるという性質があります。

アルコールは酸化するとアセトアルデヒドに変化し、これがタンニンの不溶化をもたらします。

追熟

渋柿は空気中で放置しておくと、時間はかかりますが徐々に熟していき、完熟すると甘くなります。

しかし、エチレンガスがあると熟成が促進します。エチレンガスは果実の色づき、軟化といった成熟に関係していて、柿などの果物の熟成を促進する働きがあります。

果実は、それ自身でエチレンガスを発生していますが、果物の種類によりエチレンの発生量に違いがあります。エチレンの発生量が多いのがリンゴです。

リンゴと一緒に柿をビニール袋に入れて密封しておくと、追熟してタンニンの可溶性から不溶性への変化が早くなり、果実も柔らかくなります。

湯を使う

渋柿を40~42℃くらいの湯に一晩つけておくと渋柿は甘くなります。

湯に漬けるため、柿が水っぽくなり、柿の保存性が低下するので、本当に必要な分だけ試した方が無難です。

湯に漬けると、柿は窒息状態になり、40℃くらいの温度はアセトアルデヒドができやすい環境になるので、タンンニンの不溶化が促進されます。

ドライアイス

渋柿とドライアイスを容器に入れて密封し、後は放置するだけです。

ドライアイスは二酸化炭素の固体状態での呼び方です。ドライアイスは常温、1気圧の状態では、昇華して気体の二酸化炭素に変わります。

ドライアイス(二酸化炭素)を使うと、酸素が足りなくなって、柿の果実が窒息状態になります。その時に柿の中でアルコールができて、アセトアルデヒドも生成されるので、これがタンンニンの不溶化をもたらします。

干し柿

渋柿は干し柿にすることにより、甘くすることができます。

干し柿は皮をむくことによって、表面に皮膜ができ、柿の果実は呼吸ができなくなります。

その結果アセトアルデヒドがたまり、果実に含まれる可溶性タンニンをアセトアルドと結合させて不溶化することができます。

まとめ

柿の渋みは果実に含まれるタンニンという成分によります。

タンニンは渋柿、甘柿のどちらにも存在する成分ですが、渋柿のタンニンは水に溶けやすい性質(可溶性)があり、食べるとタンニンが唾液により溶けるので、渋みを感じるのです。

柿の果実が熟するにしたがって、タンニンは水に溶けやすい性質から水に溶けない性質(不溶性)に変わるため、舌は渋味を感じなくなり、甘さを感じるようになります。

タンニンが水溶性から不溶性に変わっていくタイミングが早いものが甘柿で、遅いものが渋柿です。これが渋柿と甘柿の違いです。

渋柿と甘柿は外観からは見分けることはできませんが、果実の断面の茶色の粒の有無により判断できます。

渋柿の渋抜きはいずれも、可溶性タンニンから不溶性タンニンへの変換を促進させることにより行われています。

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