食虫植物というと、虫を食べる怖い、不気味なイメージを思い浮かべるかもしれませんが、どの食虫植物も虫を惹きつけて捕らえるためにユニークで美しい姿をしています。
ここでは、食虫植物の虫を捕らえる仕組みについてご紹介します。
食虫植物とは?
食虫植物は虫を誘って捕獲し、消化吸収して、それを養分にして育つ植物です。
日本も含め世界中に広く分布し、原種だけでも600種類以上あるといわれています。
なぜ虫を食べるの?
食虫植物は基本的には植物なので、光合成を行って生きています。
しかし、食虫植物は栄養が乏しいやせた土地で自生しているものが多く、不足する栄養分を補うために、虫を捕まえて栄養にして生きているのです。
食虫植物の虫を捕らえる仕組み
食虫植物の虫を捕らえる仕組みには何種類かあります。
粘り着け方式
葉の表面に生えている腺毛の粘液で虫を粘り着けて捕らえます。
捕獲後は消化液を分泌して消化吸収します。
この方式で捕食する食虫植物
ドロセラ、ピンギキュラ、ドロソフィルム、ロリドゥラ、ビブリス
挟み込み方式
二枚貝のような形状の葉の内側に感覚毛が生えていて、そこに虫が接触すると葉が閉じて、虫を挟み込んで捕らえる方式です。
この方式で捕食する食虫植物
ハエトリソウ 、ムジナモ
落とし穴方式
袋の内部に溜まっている水に虫が落ちて、溺れ死んでからゆっくり時間をかけて消化、吸収します。
この方式で捕食する食虫植物
ウツボカズラ 、サラセニア、セファロタス、ダーリングトニア、ヘリアンフォラ
吸い込み方式
補虫用袋の入り口付近の弁に生えている感覚毛に虫が接触すると弁が内側に開き、水と一緒に虫を吸い込みます。虫を吸い込むと弁は閉じて出られなくなります。その後消化、吸収します。
この方式で捕食する食虫植物
ウトリクラリア
迷路誘導方式
地中に伸ばしたY字形をした細い管状の葉が迷路となり、水流が加わることにより虫は逃げ出せなくなり、底まで誘い入れてしまいます。
この方式で捕食する食虫植物
ゲンリセア
次に食虫植物の中でも人気のあるウツボカズラとハエトリソウについて、細かく見ていきましょう。
ウツボカズラ
ウツボカズラは東南アジア、オーストラリア、スリランカ、マダガスカルなどの熱帯地方で自生しています。
現在のところ約70種が発見されていて、特徴的なツボ型の部分は捕虫器で、葉が変形したもので、中に消化液が含まれています。
この消化液には界面活性という水と油をなじませ易い働きがあるので、虫の体の中に水が入り込んで虫はどんどん沈んでいきます。
また、ウツボカズラの消化液では動物性のタンパク質は溶かしますが、昆虫の外側の硬い殻はほとんど分解されませんが、ウツボカズラの袋が枯れて地面に落ちると、袋の中に残っていた硬い殻はバクテリアなどに分解されて、結局は根から栄養として吸収されることになります。
ハエトリソウ
ハエトリソウは食虫植物の中で最も有名で、ダーウィンが熱心に研究に取り組み、世界で最も不思議な植物と呼んだことでも知られています。
ハエトリソウは熱帯のジャングルに生えていそうなイメージが強いですが、意外にも北アメリカのノースカロライナ州とサウスカロライナ州の湿地帯に自生しています。
ハエトリソウは二枚貝のようになった葉で虫をパクッと挟み込んで捕獲し、5分ほど時間をかけて葉をさらにきつく絞り込んでいきます。
この葉を閉じる運動には大きなエネルギーを必要とするため、空振りは致命的になるのです。
空振りを避けるために、葉は内側にある感覚毛と呼ばれるトゲ状のセンサーに2回触らないと閉じないようになっていて、獲物以外のものが触れても閉じないように工夫されているのです。
いたずらにハエトリソウの葉に指で触って、空振りを続けさすとハエトリソウは疲れ果てて枯れてしまうそうです。
食虫植物は実に奇妙で興味深いですね。
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