彼岸花(曼珠沙華)は毒があるのに食用や薬になる!|不吉な別名とは?


彼岸花(ヒガンバナ)は9月下旬の秋のお彼岸の頃に咲くことからその名が付けられました。

お彼岸近くになると、地面から葉も枝もない花茎だけをスルスルと伸ばし、30~50cmほどの長さになると、その先端に赤く華やかな花を咲かせるのが特徴です。

この彼岸花には毒性があり、かつては食用にされたり、薬にも使われたりしていました。

彼岸花の別名曼珠沙華(まんじゅしゃげ)は、サンスクリット語で天界に咲く花という意味です。

 

彼岸花には、その他にも多くの別名があり、いずれも不吉で不気味な名前が多いです。

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彼岸花に含まれている毒性とは?

彼岸花には、花、茎、葉、根など全ての部分にアルカロイド系のリコリンガランタミンなど約20種の毒が含まれていて、特に鱗茎(りんけい)と呼ばれる球根部分に毒が多くあります。

ノビルやアサツキという植物は食用にされることがありますが、見た目が彼岸花とよく似ていることから誤って彼岸花を食べてしまい、体調を崩すことがあります。

ただ、彼岸花を触っただけでは症状がでることはないとされています。

彼岸花の毒の致死量と症状

球根中にはリコリンが1g当たり 約0.5 mg、葉中には 1g当たり約0.3 mg含まれています。

球根一つには約15mgのリコリンが含まれていて、これはネズミ1500匹の致死量に相当します。ヒトに対する致死量は10gですから、球根667個がヒトの致死量になります。

球根を1個食べても重篤な症状になることは基本的に少ないとされています。

口から摂取すると吐き気や下痢を起こし、ひどい場合には中枢神経の麻痺を起こして、場合によっては死に至ることもあります。

少し触るだけなら危険はありません。
しかし、小さなお子さんやペットが食べたりする危険性があるので、彼岸花には近づけないようにしましょう。

彼岸花の毒抜きの方法

リコリンは水溶性なので、水でよく洗うと毒成分は抜くことができます。

おろし金などですり潰して、数日間流水にさらすことで食用にすることができます。

しかし、素人判断で行うのは危険なため、絶対しないようにしてください。

昔の人は彼岸花を食用にしていた

台風や津波で地域が浸水したときに、住民が避難するためにつくられた、人工の高台のことを命山(いのちやま)といいます。

命山には彼岸花がたくさん生えていることがあります。

彼岸花の球根には毒がありますが、水にさらして毒を抜くと豊富なでんぶんを得ることができます。

そのため、飢饉や天災など、非常時の食糧にするために、江戸時代には命山に彼岸花が植えられていたのです。

また、第二次世界大戦中などの食料難の時や非常時にも彼岸花が食用とされていたことがあります。

昔の人たちにとって彼岸花は大切な食糧だったのです。

彼岸花の薬としての利用

彼岸花の鱗茎(球根)は石蒜(せきさん)とも呼ばれ、漢方薬として、去淡、解毒、催吐薬に用いられたことがありますが、毒性が強いために現在は貼り薬として用いられています。

生の鱗茎をすりおろし、足の裏に貼って浮腫を取ったりするのに使われます。

ガランタミンは、小児麻痺や筋無力症などによる運動麻痺の治療に用いられているほか、アルツハイマー病の治療薬としても利用されています。

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彼岸花が墓地や田んぼなどの場所に多い理由

彼岸花は種子ができないので、球根で繁殖します。

墓地や田んぼの畦道(あぜみち)に多く見られる彼岸花は、自然に発生したのではなく、人が人為的に球根を植えて増やしていったものと考えられています。

墓地

現在の日本では人が亡くなると火葬されますが、かつては遺体を土の中に埋葬する土葬が行われてきました。

土葬すると遺体をモグラや野ネズミなどの動物が土を掘り返して、遺体を食い荒らすことがありました。

彼岸花の球根に含まれる毒にはモグラ、ネズミなどの動物を寄せ付けない忌避作用があるといわれていて、そのため、墓を守るために彼岸花が墓地に多く植えられてきました。

田んぼの畦道

彼岸花の根は牽引根(けんいんこん)といって球根を地中へ潜り込ませるように縮む性質を持っています。増水などで土が崩れて、球根が浮くと、根は縮んで球根を土の中に引っ張り込む土どめの役目を果たします。

彼岸花に含まれるリコリンやクリニンには、他の植物の生育を抑える物質を出すアレロパシーという雑草抑制の作用があります。

また、彼岸花の忌避作用により、畦道や土手に穴をあけるモグラ除けの効果もあるといわれています。

これらのことから、田んぼの畔道に彼岸花が植えられたと考えられているのです。

彼岸花の怖い不吉な別名とは?

彼岸花には、「曼殊沙華」、「天蓋花」など1000を超える多くの別名があります。

その中でも彼岸花には「地獄花」、「幽霊花」、「死人花」、「葬式花」などの名前がつけられ、不気味で縁起の悪い不吉な植物だといわれてきました。

先に記したように昔の人たちにとって彼岸花は大切な食糧でした。

そんな大切な花がイタズラされないように、「あの花には毒がある」、「あれは不吉な花だから採ってはいけない」、「花に触ると手がかぶれる」、「花を採ると家が火事になる」と子供たちを戒めて遠ざけたのです。

もちろん、彼岸花に毒があることから、誤飲を防ぐように彼岸花を摘んで、持ち帰ることを禁じたという理由もあります。

それが、世代を経るうちに不吉なイメージだけが残って現在でも伝わっていると考えられています。

最後に

彼岸花(曼珠沙華)は、毒性がありますが、薬や食用に使用されていたことを記載しました。

あの妖艶な赤い花を見ているだけで癒されるという人も多いのではないでしょうか?

彼岸花は見ているだけにし、興味本位で毒抜きをして食べたりするようなことは絶対やめてくださいね。

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