コアラは世界でオーストラリアにだけ棲息し、カンガルーと同じ有袋類と呼ばれる哺乳類の一種です。
コアラの生息数は現在減少傾向にあります。
この状況の背後には、捕食者の存在が大きな要因として挙げられます。
さらに、山火事のような自然災害もコアラの生息地を奪い、野生のコアラがいなくなったエリアも存在します。
この記事では、コアラの天敵や生息数が減少している要因について記載しています。
コアラの天敵
コアラは主に樹上で生活しており、地上に降りることは稀ですが、地上にいる間はいくつかの捕食者に脅かされる可能性があります。
コアラの天敵には以下のようなものがあります:
猛禽類
コアラは大きな猛禽類によって捕食されるリスクがあります。
特に若いコアラや小さな個体は、ワシやタカなどの大型の鳥類に襲われる危険性があります。
ディンゴ
ディンゴは通常、集団で行動することが多いですが、独りで生活する個体も存在することが知られています。
元々ディンゴはオーストラリアの固有種ではなく、歴史を遡ると約3500年前にアジア地域から渡ってきたとされています。
ディンゴは樹登りをする習性がないため、コアラが樹上にいる時は襲われるリスクは低いです。
しかし、コアラが地面に下りてくると、ディンゴに襲われる危険性が急激に増します。
コアラは移動速度が遅く、地上においては敏捷なディンゴの相手ではなく、一度追い詰められると逃げるのが非常に困難になります。
さらにディンゴは集団で狩りを行うことがあり、コアラが安全な樹上へと逃れるのは一層難しい挑戦となります。
オオトカゲ(ゴアンナ)
ゴアンナはオーストラリアに生息するオオトカゲの中で特に知られている種です。
その体長が3メートルに達することもあり、非常に大きな体躯を持つことが認識されています。
この生物は肉食性を持ち、さらには毒腺も有しているのです。
普段は地面にいることが多いですが、木を登る能力もあり、そのため時にはコアラを捕食対象とすることがあります。
ゴアンナの特徴の一つに、分岐した形状の舌があり、これにより匂いを感じ取りコアラを探知することが可能です。
ゴアンナが獲物を噛むと、その毒が血液の凝固を阻害し、コアラは過度の出血により命を落とすことがあります。
その他
コアラにとっての天敵としては、猛禽類、ゴアナ(オオトカゲ)、ディンゴ、などが挙げられます。
ヨーロッパからの入植以来、野生化したキツネ、犬、猫などが新たな脅威となっています。
キツネは、母コアラが移動のために地上に降りた際に子コアラを捕獲することがあります。
さらに、大型で凶暴化した猫も子コアラを狙うことがあります。これらの動物はオーストラリア原産ではなく、ヨーロッパから持ち込まれたものです。
これらの捕食者は、コアラが木から降りたり、地上を移動している際に襲う機会をうかがっています。
コアラは自然界では比較的捕食者の少ない環境に生息していますが、人間による環境の変化や、野生化したイヌやキツネなどの導入により、新たな脅威にさらされています。
また、コアラはユーカリの葉を主食としており、これらの葉は消化が悪く栄養価が低いため、コアラはエネルギーを節約するために一日の大部分を休息して過ごします。
そのため、活動時間が限られており、この休息時間中に捕食者から身を守るために樹上に留まることが多いのです。
コアラの生息数が3年で3割も減少
オーストラリアコアラ基金という動物保護団体が、オーストラリアにおけるコアラの数が過去三年で約30%も減ったという研究結果を公表しました。
この研究によれば、オーストラリア国内におけるコアラの推定個体数は、現在32,000匹程度にまで下がっているとされています。
さらに、かつては128の地域に野生のコアラが生息していたのに対し、現在ではその数が47地域に減少し、野生のコアラがいなくなったと報告されています。
コアラの生息数の減少の原因
コアラの生息数の減少には、天敵による捕食だけでなく、以下のような人間活動による影響も大きく関わっています。
生息地の減少
農場や住宅、鉱物の採掘、林業、商業施設、工場や道路の建設のために森林が伐採されること。
交通事故
生息地が失われると、コアラは車や飼い犬による事故で命を落とすことがあります。
森林火災
土地開発の影響を受けた孤立した森林地域に生息するコアラは、森林火災で生息地を失うリスクがあります。
病気
クラミジアによる結膜炎、盲目、肺炎、尿路感染症などの病気があり、ストレスの増加がこれらの病気の発症に関連していることが明らかになっています。
立ち枯れ
土地開発による森林伐採が生態系のバランスを崩し、コアラの主食である樹木の75%が減少しています。
以上のように、コアラの絶滅危機は高まっていて、オーストラリア政府は、2022年2月に自国の国内版レッドリストで、「危急種(VU)」から「絶滅危惧種(EN)」にランクアップすることを決定し、森林の回復などを視野に入れた、保全活動への資金拠出も決定しました。