神社を参拝すると、入り口、拝殿の前、参道に犬のような動物の石の像が左右一対で置かれていますが、これは狛犬(こまいぬ)といいます。
ここでは、狛犬とは何なのか、その意味や役割、由来、また、狛犬に関して使われる阿吽についても記載しています。
狛犬とは?
神社の入り口、拝殿の前、参道の要所などに置かれている狛犬は、左右2体でセットになっています。
元々狛犬は「獅子・狛犬」と呼ばれていましたが、次第に前の獅子は呼ばれなくなり、現在では単に「狛犬」と呼ばれるようになりました。
獅子も狛犬も、元々は架空の動物で、霊力を持った動物とされています。
狛犬の意味や役割
狛犬は、悪い気や悪い霊が入ってこないようにするための魔除けのためのもので、邪気を祓い、神前を守護する意味があります。
いわば神社を守るガードマンのような役割で置かれています。
狛犬は、神社に置かれていることが多いですが、奈良の東大寺のように、お寺に置かれていることもあります。
狛犬の起源、由来
狛犬の起源は、古代エジプトや古代オリエントといわれていて、そこから、インド、中国を経て日本へ入ってきたといわれています。
古代エジプトでは神域を守るライオンの像があり、古代オリエントでは神や王位の守護神としてライオンを用いていました。
また、古代インドで、仏様の両脇に守護獣としてライオンの像が置かれていました。
狛犬は飛鳥時代に、中国から仏教とともに伝わったとされています。
狛犬が中国から日本へ伝えられた当初は、宮中で魔除けのために用いられていました。
その当時の狛犬は、ほとんどが両方とも口が開いている獅子像で、阿吽の形にはなっていませんでした。
日本独自の「獅子・狛犬」の形になったのは、平安時代後期頃からです。
その後、天皇と縁のある有力な寺社に伝えられ、さらに時代を経て一般の寺社にも普及するようになりました。
阿吽とは?
インドの古い言語にサンスクリット語があります。
サンスクリット語は梵語(ぼんご)ともいわれ、古代インドを発祥とし、仏教の伝来とともに中国を経由して日本に伝わった言葉です。
そのサンスクリット語のアルファベットの最初の文字が「あ」で、最後の文字は「うん」で、
「あうん」の音を当てはめた漢字が「阿吽」です。
阿吽の意味
阿吽には、いろいろな意味の解釈があります。
始まりと終わり
「阿」は口を開いて最初に発する音であり、「吽」は口を閉じた時の最後の音であり、阿吽は「初めから終わりまで」を意味し、万物の始まりと終わりを象徴するものとされていました。
阿吽の呼吸
阿は吐く息、吽は吸う息です。
このことから、「阿吽の呼吸」というように、相撲の仕切りなど、何かを一緒に行うときに互いに微妙なタイミングやリズムが合うことを言い表す言葉として使われるようになりました。
狛犬の阿吽の位置
阿吽は対となるものを表す場合にも使われます。
神社の狛犬は、必ず2頭が1対でセットになっていますが、この2頭は同じものではありません。
向かって右側の口を開いたものが阿形(あぎょう)でこれが獅子、左側の口を閉じて角があるものが吽形(うんぎょう)でこれが狛犬です。
また、寺院の仁王門に立って仏法を守護する金剛力士像(仁王像)も、向かって右が口を開く阿形を、左側が口を閉じる吽形を示しています。
このように、阿吽は対となる形の像で表されるようになり、狛犬や金剛力士像が作られるようになりました。

出典:http://uruseiyatsura.web.fc2.com
狛犬はオス?それともメス?
狛犬の性別については、様々な説があります。
一番多いのは、右の獅子は雄、左側の狛犬は雌というものです。
逆に、阿像は弱いから吠えているので雌という説もありますし、また、守護獣は戦う獣なのだから両方共雄だ、など諸説あります。
これが正しいと決めつけられるようなものはありません。
神社にいる狛犬以外の動物
神社に置かれているのは、狛犬だけではありません。
その神社に縁のある神獣が置かれることもあります。
神獣は神様の意思を伝える役割を持つ神使(しんし)と呼ばれ、狛犬の魔除けの役割も果たしています。
大国主命を祀っている神社はウサギやネズミ、菅原道真を祀っている神社は牛、稲荷神社はキツネの像が置かれています。
狛犬とシーサーとの違いは?
狛犬に似たものに沖縄のシーサーがあります。
シーサーのルーツは狛犬と同じ古代エジプトや古代オリエントのライオンだという説がもっとも有力です。
狛犬は、寺社の魔除けの役割を果たしていますが、シーサーは家の魔除け、守り神として、家の玄関や屋根にオスとメスの対で置かれています。
メスのシーサーは口が開いていて、福を招き入れ、オスのシーサーは口を閉じていて、災難から守ってくれます。

出典:https://travel-noted.jp
最後に
狛犬についての研究はあまり進んでいないようで、その由来などについては、諸説があり、謎がいっぱいです。
しかし、狛犬についていくらかでも知識を持つことができれば、寺社に参拝するときには、違った気持ちでお参りできるのではないでしょうか。