マグロが泳ぎ続ける理由 いつ眠るの?

マグロは休むことなく、一生泳ぎ続けることで知られています。

本記事では、マグロが高速で泳ぎ続ける理由、高速で泳ぎ続けるための体の仕組みを記載しています。

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マグロが泳ぎ続ける理由

エラの働き

魚は人間と同様、酸素を吸って二酸化炭素を排出する呼吸をしています。

人間と違うのは、魚は肺ではなくエラで呼吸をしていることです。

魚は口から水を飲み、エラに水を送ります。

エラには、たくさんの血管が通った鰓弁(さいべん)と呼ばれるデコボコした組織があり、ここで、水をろ過させることによって水中に含まれた酸素を吸収し、不要になった水と二酸化炭素を外に放出しています。

魚はこのエラに新鮮な海水を送り込むために、常にエラブタを開閉させています。

水槽の中で泳ぐ魚が、エラブタをパカパカと開閉しているのは酸素を体内に吸収し、無駄な水を排出しているのです。

止まるとどうなる?

マグロは自力でエラブタを開閉できません。

マグロのエラブタは、泳いでいないと閉じる構造になっています。

新鮮な海水をエラに送り続けるためには、常に口を開けて泳ぎ続けなくてはなりません。

口を開けて泳ぐと、海水が口のなかに大量に入ってきて、その海水の勢いで自然と海水がエラの表面と接触し、溶けている酸素を効率よく取り込むことができます。

この呼吸はラムジュート換水法と呼ばれています。

マグロが泳がないで止まってじっとしていると、エラブタが閉じた状態になり、呼吸できなくなるので窒息死してしまいます。

体を浮かせる

マグロの浮き袋は小さめで、マグロの比重が周囲の海水の比重と比較して大きいため、マグロの体は沈みがちになります。

このため、マグロは水中を泳ぐことで体を浮かして沈まないようにしています。

胸ビレと、尾ビレの付け根にある隆起縁と、体そのもので、下から上に押し上げる力が生じます。

これは、飛行機が翼に生じる下から上に押し上げる力で、空中に浮くのと同じ原理です。

マグロはいつ眠るの?

それでは、マグロはいつ眠るのかという疑問がわきますが、マグロは眠らない魚です。

夜間も速度を落として代謝を下げて、延々と泳ぎ続けます。

なぜ速く泳ぐ必要があるの?

マグロは泳ぎ続けるだけでなく、高速で泳ぐことで知られています。

マグロは、エサの乏しい外洋を回遊することが多い魚です。

泳ぎ続けるための体力を維持するためには、小、中型の魚類や甲殻類、イカなどを多く摂取することが必要です。

マグロは、少ない餌を確実に捕まえるために、高速で泳ぐ必要があるのです。

泳ぐ速度

通常は時速30~60kmくらいで泳ぎますが、最高では時速160kmで泳ぐこともあるようです。

また、大西洋を一気に横断してしまうほどの持久力もあり、わずか1ヶ月で4000kmの距離を泳いだという記録があります。

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高速で泳ぎ続けるための体の仕組み

ミオグロビンの豊富な筋肉

マグロの身は赤身の魚です。身が赤いのは、新陳代謝に必要なミオグロビンなどの赤色色素を多く含んでいるためです。

マグロが高速で泳ぎ続けるのに必要なエネルギーを産生するためには、大量の酸素が供給されなければなりません。そのために、ミオグロビンが必要です。

ミオグロビンは筋肉中に含まれていて、代謝に必要な時まで、酸素を貯蔵する色素タンパク質です。

マグロには、ミオグロビンが筋肉1kg当たりに5~6g含まれています。これが、マグロが驚異的な体力をもっている理由です。

ちなみに、カツオは1kg当たりに1.5g、白身魚であるタイは1kg当たり0.06gです。

マグロは、白身魚であるタイと比較すると、圧倒的に新陳代謝に優れていて、持久力があります。

流線型の体型

出典:講談社 はてな委員会(編)「動物のはてな」

マグロは高速で泳ぐために、水の抵抗が少なくなるように、流線型の体型をしています。

しかも泳いでいる間は、方向転換する時に使う胸びれ、腹びれ、背びれ(第1背びれ)は抵抗の原因になるので、ヒレの格納溝にたたみ込まれています。

第2背びれ、臀ビレの後ろには、小離鰭(しょうりき)と呼ばれる三日月形の小さな突起がありますが、この突起の働きで、高速で泳ぐ時に体の周囲に生じる渦流を抑えて、抵抗を減少させることができます。

体温が高い

通常、魚は変温動物です。自分で体温調節ができないため、体温は周囲の水温と同じくらいです。

しかし、マグロは、周囲の水温よりも5~15℃程度高くなっています。

体温が高いと、筋肉によって得られる力は強くなり、水温と同じ体温の魚に比べて、泳ぐスピードは速くなり、長い距離を泳ぐことができます。

普通の魚は、筋肉で生じた熱は静脈に伝わり、呼吸をするエラから体外に排出されてしまいます。

このため、動脈を流れる血は冷たく、筋肉の温度を上げることができないので、強い筋力を得ることはできません。

マグロでは、暗赤褐色の血合筋には、奇網(きもう)と呼ばれる組織が発達しています。

奇網は非常に細い動脈と静脈が近接していて、血流は互いに逆方向になっていて、ここで、 熱い静脈の熱が効率よく、動脈に熱交換されます。

この奇網があるおかげで、静脈血の熱のほとんどはエラに運ばれる前に動脈血に伝わり、周囲の海水温よりも筋肉の温度を高く保つことができます。

その結果、筋肉活動を促進して、強い推進力を得ることができます。

体の表面の秘密

マグロの体の表面はヌルヌルした粘膜で包まれていて、この粘膜は、水の抵抗を減らすのに一役買っています。
日本の塗料メーカが、マグロの体の表面にある粘膜をハイドロジェルという素材を用いて再現した船底防汚塗料を開発して実用化されています。
このように生物の特徴に注目して、ものづくりに活かした技術をバイオミメティクス(生物模倣技術)と呼びます。

バイオミメティクスについては、記事「バイオミメティクスの歴史と例」を参照してください。

まとめ

マグロが泳ぎ続けるのは、止まってしまうと、エラが閉じてしまうので、窒息死してしまうからです。

また、浮袋が未発達なため体が沈みので、泳ぐことにより体を浮かせています。

高速で泳ぐのは、餌の少ない外洋を回遊することが多いので、餌を確実に捕らえるためです。

マグロは高速で泳ぎ続けるために、以下のような仕組みが体に備わっています。

・筋肉はミオグロビンが豊富で、酸素を豊富に供給でき、新陳代謝に優れていて、持久力がある。

・流線型の体型をしていて、抵抗力の影響を受けにくくなっている。

・体温が高く、筋肉はパワーを発揮できる。

・体の表面はヌルヌルした粘膜で包まれていて、この粘膜は、水の抵抗を減らしている。

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